周防正行~サイレント映画時代、客は映画よりも“活動弁士”の話を聞きに行った

引用元:ニッポン放送
周防正行~サイレント映画時代、客は映画よりも“活動弁士”の話を聞きに行った

黒木瞳がパーソナリティを務める番組「あさナビ」(ニッポン放送)に、映画監督の周防正行が出演。最新作の『カツベン!』について語った。 周防正行~サイレント映画時代、客は映画よりも“活動弁士”の話を聞きに行った ニッポン放送「あさナビ」 周防)日本に映画が入ったのは明治の終わりなのですが、そのときに「写真が動く」と言って、みんながびっくりしました。当時の映画はモノクロで、音もついていなかった。いままで動く写真を見たことがなかったので、一気に人気が広がるのですが、そのときにスクリーンの横に人が立って、映画の内容や、どうして写真が動いて見えるのかを説明していた人たちがいたのです。それが活動弁士、いわゆるカツベンと言われる人たちです。彼らの青春時代を、活動写真のアクションとユーモアのセンスでつくったのが今回の映画です。この映画を観ると、活動弁士の仕事ぶりもよくわかるけれど、初期の映画が持っていた楽しさもよくわかります。当時の映画にあるアクションやユーモアは、いまの映画とちょっと違うアクションとユーモアなのです。そこを楽しんで欲しいと思っています。

黒木)サイレント映画の横にカツベンという人が立って、説明したりセリフを言ったりするのですが、お客様の入りが如実にわかるのですね。面白いといっぱい入るし、面白くないとヤジが飛ぶ。

周防)カツベンは映画館の専属だったので、引き抜き合戦もあったのです。映画を観に行くというより、弁士の話を聞きに行くという感覚も強かったのだと思います。

黒木)やはりカツベンは、その時代のスターだったわけですね。

周防)そう言う人もいます。

黒木)そしていま、日本に十数人いらっしゃる。それも驚きなのですけれども。

周防)ずっとつないで来た人がいるのですよ。澤登翠さんという人が第一人者です。彼女の貢献は素晴らしいです。その師匠である松田春翠さんが、戦後日本でなくなりかけていたサイレント映画を集めてくれた。マツダ映画社というところには、たくさんの活動写真やフィルムが残っています。

黒木)この映画にもたくさん出て来ますが、そういうところから選んで監督が編集なさったのですね。

周防)再現しました。撮り直したのです。現存するものは、そっくりに撮り直しました。いちばん多いのは、撮られた記録はあるのに、フィルムが残っていないというものです。「こんな感じだったのだろう」と、僕が監督して撮りました。あと、この映画のためにどうしてもつくらなくてはいけない無声映画は、もちろん片島さんの脚本で僕が撮りました。『火車お千』という短編ですけれど、1本のきちんとした無声映画になっています。

黒木)そうなのですか?

周防)映画のなかでは一部分しか使っていませんが、短編映画として成立しています。

黒木)それだけで作品になっているのですか?

周防)はい。それを、いまの活動弁士さんに使って欲しいと思っています。

黒木)そういう上映会も今後、考えられると思いますけれども。『カツベン!』の主演は成田凌さん、共演は黒島結菜さん。清らかで本当に素敵な方ですね。

周防)そうでしょう。しかし、とても自信なさげで、「私はここにいていいのか」というような。可愛くてきれいで、そのままニコニコしていれば十分だろうと思う子なのに、きちんと青年らしい悩みがあったのですよね。それがこの映画のヒロインの役柄にぴったりだなと思って、彼女にお願いしました。

黒木)ぴったりでした。永瀬正敏さんもぴったりでした。他にも高良健吾さん、井上真央さんなど。大人になった真央ちゃんが見られますよね。

周防)井上さんには力を抜いて、遊んでほしいと思って。

黒木)音尾琢真さん、竹野内豊さん、そしてお馴染みの竹中直人さんや、渡辺えりさん、小日向文世さん。常連のキャストの方々も出演なさっていて、草刈さんも出演されているのですよね。

周防)ええ。探してください。

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