村上春樹 ホノルルで「あなたは日本の有名な…シェフでしょう?」と間違えられる

引用元:TOKYO FM+
村上春樹 ホノルルで「あなたは日本の有名な…シェフでしょう?」と間違えられる

作家・村上春樹さんがディスクジョッキーをつとめるTOKYO FMの特別番組「村上RADIO~冬の炉端で村上SONGS~」が12月15日(日)に放送されました。第10回目となる今回は、村上さんが所蔵するレコードのなかから、最近入手したものを中心に選曲。さらに、番組Webサイトで募集した「村上春樹さんに聞いてみたいこと、言いたいこと」に寄せられたリスナーからのメッセージにも応えました。本記事では、前半2曲についてお話しされた概要を紹介します。

<オープニング曲> ◆Donald Fagen with Jeff Young & the Youngesters「Madison Time」

こんばんは、村上春樹です。そろそろ今年も終わりに近づいてきました。というわけで今日は、今年僕が手に入れたディスクのなかから、個人的にわりと気に入ったものをかけます。
といっても僕の場合、買うのは新譜よりは古いアナログ・レコードのほうが圧倒的に多いので、新しいものはあまりかかりません。すみません。でも少しは新しめの音楽もかけます。古いものばかり聴いていると、進歩がないですものね……。ていうか、今さら進歩しなくてもいいんじゃないかという気もするんだけど、まあそこはとりあえず。

◆Bruce Springsteen「Moonlight Motel」

まずは、今年リリースされたブルース・スプリングスティーンのアルバム『Western Stars』のなかの曲です。このアルバム、派手さはないけど、じっくり聴き込むと、けっこう心に沁みます。とくに最後のトラックの「Moonlight Motel」、とても美しい曲で、僕は個人的に気に入っています。

あまり車の通らない街道筋にある、さびれたモーテル。ほとんど客は来ない。プールは涸れてひび割れ、部屋はかび臭い。主人公はそこで人妻と密会をしているみたいです。そしてそれは、どうやら先の見えない、煮詰まった恋のようです。でも彼は、どうしてもそこに引き戻されてしまう……。

  君の口紅の味、君が囁(ささや)いた秘密
  僕はそれを誰にも言わないよ。
  半分残ったビール、僕の耳にかかる君の吐息
  場所はMoonlight Motel