ハーレイ・クインを演じプロデューサーも務めるマーゴット・ロビー「現実を忘れて楽しい時間を過ごして」

引用元:Movie Walker
ハーレイ・クインを演じプロデューサーも務めるマーゴット・ロビー「現実を忘れて楽しい時間を過ごして」

2019年のマーゴット・ロビーは超多忙だった。『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』(19)のシャロン・テート役、第92回アカデミー賞で助演女優賞にもノミネートされた『スキャンダル』(19)の若きニュースキャスター役、そして『ハーレイ・クインの華麗なる覚醒 BIRDS OF PREY』(公開中)でマーゴットは、主演だけでなくプロデューサーとしても作品を支え続けてきた。そんなマーゴットにインタビューし、本作の制作秘話を聞いた。

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マーゴットが「ハーレイ・クインの単独主演映画を作るべき」とワーナー・ブラザース・スタジオに企画のアイデアをプレゼンしたのは、『スーサイド・スクワッド』(16)のプロモーションで夏のコミコンに登壇した時だったそうだ。

「プレゼンが終わってすぐに、本作の脚本を担当したクリスティーナ・ホドソンと2人でプロジェクトを動かし始めたの。最初の3年間は私が唯一のプロデューサーで、クリスティーナと2人で坂道を登っているような状態だった。本作くらい規模が大きな映画だと、スタジオに制作開始のゴーサインを出してもらうまで、いろいろとやらないといけないことがあるから。脚本が書きあがって、スタジオからのOKが出て、契約を結んで初めて、スタッフたちを集めだすことができる。制作資金が入ってから、ワーナー・ブラザーズのマーケティングから1人と『アイ,トーニャ 史上最大のスキャンダル』(17)でも組んだプロデュサーのブライアン・アンケレスを招き入れて、監督探しを始めたの」と開始までの道のりを振り返った。

「キャシー・ヤンに監督をお願いしてからは、監督のビジョン形成を手助けし、彼女が心配なく旅を始められる準備をした。そのあとのプロデューサーの仕事は予算管理。ロケーション・インセンティブ(ロケ地による税制優遇制度)を交渉したり、スケジュール調整をしたり。それから撮影、編集にマーケティングとプロモーション…本当に長い道のりだったけれど、この作品に最初から関われて本当に幸せだった。いまは、日本での公開を前にして、みんなが楽しんでくれたらいいなあって願うだけ。友達と一緒に映画館へ行って、少しでも現実を忘れて楽しい時間を過ごしてもらえたらなあと思う」

本作の企画開発中に『アイ,トーニャ 史上最大のスキャンダル』で実践経験を積み、マーゴットのプロデューサーとしての才能は見事に花開いた。夫のトム・アッカリーも、彼女立ち上げた制作会社のパートナーとしてマーゴットを支えていたそう。昨今、俳優がプロデュサーを務めることは決して珍しいことではないが、彼女の口ぶりからは、ハーレイ役を演じること以上に、プロデュサーとして作品を生みだすことを楽しんだことが伝わってくる。同じように、『スキャンダル』のプロデューサーとして作品を導いたシャーリーズ・セロンから学ぶところも多かったという。

「実は、『アメリカン・レポーター』(16)に出演した時、主演のティナ・フェイがプロデューサーとして関わっていて、その時も彼女からプロデューサーの仕事についてたくさん学んだわ。シャーリーズにも、どのように主演とプロデューサーの二足のわらじをコントロールするのか、どのように制作会社を作るのかなど質問をしまくった。ティナもシャーリーズもとても有能なプロデューサーで、人柄も素晴らしかった。でも、それと同時に『スキャンダル』の撮影現場では、俳優の仕事だけに集中できるありがたさも再認識したんだけどね(笑)。スタッフが残業行うことになっていないか、撮影のロケーションは問題ないかなんて気にしないですむから!」

同じくマーゴットのプロデューサーとしての視点が活かされているのが、ハーレイ・クインの衣装。『スーサイド・スクワッド』と比べ、本作でのハーレイのコスチュームはキラキラ度は増し、よりポップになっている。この点については「女性視点を活かすという意識はなかったけれど、自然のなり行きだった」と言う。

「女性も男性も関係なく、たくさんのコスチューム・デザイナーと話したなかで、エリン・ベナッチが出してくれたコスチュームのアイデアや参考として挙げてくれた映画がすべて私の好み通りで、彼女にお願いすることにしたの。キャシー監督が作るゴッサム・シティは、ほかのDC映画よりも身近に感じられるような街づくりになっていたので、コスチュームからもポップな色彩やデザインが含まれる80年代のニューヨークの雰囲気を感じてほしかった。衣装合わせの時も、どんな衣装をクールだと思うか、クールに見えるか、そしてなにより戦いやすいかということを念頭に決めていったわ。結果的に女性が多い制作チームだったから、女性視点で、いかにクールでいかにセクシーかというところに落ち着いているかもしれない」

かつて、ジョーカーと交際していたハーレイ・クインが属するのは、DCエクステンデット・ユニバース。昨年の映画界では『ジョーカー』(19)が大ヒットし、ホアキン・フェニックスはジョーカー役で第92回アカデミー賞主演男優賞を受賞、トッド・フィリップスが描いた至極ダークな世界観が話題となった。マーゴットは、『ジョーカー』と同じDCエクステンデット・ユニバースにおける本作の立ち位置をどう捉えているのだろうか?

「DCとマーベルはまったく違う戦略で作品を作っているの。マーベルの映画作品は独自の定型を設けて、そのコンセプト形成が成功に繋がっている。DCの映画作品は、コミックスのように作り手たちのそれぞれの観点で自由に創作されている。作者とイラストレーターが独自の世界観を持った1冊を作るように、監督が独自の1本を作る。それぞれのビジョンには異なる美意識とトーンがあって、キャラクターや彼らの背景、作品内で起こる出来事も併せて創作できる。私はこのDCの考え方をとても気に入っていて、大きなDCのユニバースの中にはトッド・フィリップス監督が創るゴッサム・シティとジョーカーのビジョンもあれば、キャシー・ヤン監督バージョンのゴッサム・シティとハーレイ・クインも存在するし、ジェームズ・ガン監督バージョンの『スーサイド・スクワッド』もそれと共存する。それぞれが作るコンセプトに沿った世界が存在していて、それはコミックスを読んだ時の感覚に近いと思う。最新作とハーレイ・クインが初登場した回のコミックスは異なるビジョンで描かれているし、トーンも異なる。でも、ハーレイというキャラクターのあり方は共通するものを持っている。様々なクリエイターの手に委ねられ、いろいろな状況や側面を見せられても、ハーレイの芯の部分は変わらない。そのほうが、毎回異なるハーレイを楽しめるでしょ?」

そう語るマーゴットはすでに次の作品に動きだしていて、ジェームズ・ガン監督による『スーサイド・スクワッド』最新作も来年公開予定だ。『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』のクエンティン・タランティーノ監督、『ウルフ・オブ・ウォール・ストリート』(13)のマーティン・スコセッシ監督など、稀代の名監督たちが女優マーゴット・ロビーの異なる顔をスクリーンに映しだしてきたように、マーゴットが演じるハーレイ・クインも、今後異なるクリエイターの手に委ねられ、異なる姿を見せてくれるだろう。(Movie Walker・取材・文/平井伊都子)