「新聞記者」日本アカデミー賞の理由と地上波で放送される日

「新聞記者」日本アカデミー賞の理由と地上波で放送される日

 第43回日本アカデミー賞の授賞式が6日、東京都内で行われ、「新聞記者」(藤井道人監督)が作品、主演女優(シム・ウンギョン)、同男優(松坂桃李)の3部門で最優秀賞を獲得した。

「新聞記者」は、シム演じる女性記者と、政権にとって都合の悪い報道をコントロールする任務を与えられた松坂演じる官僚の姿を描いた映画だ。物語は、国会で取り上げられた、安倍首相の“お友達”とされる加計孝太郎氏が理事長を務める学校法人「加計学園」が計画した岡山理科大獣医学部(愛媛県今治市)の新設をめぐる疑惑とそっくり。まるでノンフィクション映画だ。

「(受賞するとは)全然思っていませんでした。これからも頑張って活動します」

 受賞の感想を問われた際、言葉を詰まらせ号泣するシムの姿が印象に残った視聴者も少なくなかっただろう。政権批判色が強い作品のせいか、松坂がテレビで暴露していた通り、ほとんど番宣(番組宣伝)ができず、上映した映画館も限られていた。それが3部門で最優秀賞に選ばれたのだから、シムが驚いていたのは容易に想像がつく。

 米映画界最高の栄誉とされる第92回アカデミー賞で、最高賞である作品賞に韓国の格差社会を描いた「パラサイト 半地下の家族」(ポン・ジュノ監督)が選ばれたのは、人種差別や分断を進めるトランプ大統領に対する痛烈な批判が背景にあるとされるが、日本でも映画界が安倍政権の姿勢に異を唱えたのか。

 元共同通信社の記者で、ジャーナリストの浅野健一氏はこう言う。

「主演女優は日本で誰も引き受け手がおらず、韓国人のシムさんが選ばれたと聞きます。そういう作品が最優秀賞に選ばれたのですから、日本の映画界も意地を見せたといったところでしょうか。とはいえ、翌日の新聞やテレビは淡々と報じるだけで静かなもの。おそらく地上波で放送されるのは、安倍首相が政権の座から退いた後でしょうね」

 浅野氏の予想通りだとすれば、新聞そしてテレビ離れがますます進んでもおかしくない。