ピエール瀧の復帰は早すぎか?「芸能界は甘い」に物申す

ピエール瀧の復帰は早すぎか?「芸能界は甘い」に物申す

城下尊之【芸能界仕事術】

 コカインを使用して麻薬取締法違反罪で有罪判決を受けた「電気グルーヴ」のピエール瀧(52)が、今月下旬に映画の撮影に参加し、芸能界へ復帰する。その映画は、竹中直人、山田孝之、斎藤工の3人の共同監督作品「ゾッキ」で、3年の執行猶予付き判決が下ってから約8カ月での復帰となるわけだ。

 この映画の製作発表では、「出演者のことは秋に発表するので、ピエール瀧のことも答えられない」としていたが、翌日のスポーツ紙がすべて彼の出演を報じているので間違いはないだろう。

 当然ながら、「復帰は早すぎる」「だから芸能界は甘い」とさっそく批判の声が上がっている。こうした事件では長らく復帰は執行猶予が終わってからということが“慣例”になっていたので、そう感じる人も多いのだろう。しかし、執行猶予期間中でも何らかの仕事をして生活していかなくてはならない。自分がそれまでやっていた仕事ができるのなら、その方がやりやすいのは当然だ。

 ただ、芸能人はたくさんの人にアピールする特殊な職業であり、嫌だと感じる人は多くいる。そのため、テレビ、ラジオなどスイッチを入れるだけで簡単に目や耳に入ってくる媒体は困難だ。

 一方、映画であれば、それを分かった上でお金を払って見にいくのだから、その料金を払った観衆に対して文句のつけようがない。出演させる側がピエールのマイナス面以上に彼を必要とするなら、それでよしということだろう。

 また、それ以上に、ピエールの仕事復帰ということで雑誌・新聞などに取り上げられれば、それが宣伝になるという“スケベ根性”を持つ人が、映画関係者の中にいると考えることもできる。とにかく、執行猶予中の復帰は不可という近年の厳しい慣例に対し、ひとつの風穴をあけたということだ。

 もうひとつ、芸能界は甘いという批判についても、僕は甘いというわけではないと考える。その映画がヒットすれば御の字だが、当たらなかった場合、ピエールの影響と考える製作サイドもいるだろう。いい仕事ができたという評価が下されなければ、次の仕事、またその次の仕事と続けるうちに「彼は必要ないな」という意見が出てくる。つまり、早期復帰のピエールは実力が余計に問われる。もろ刃の剣というわけだ。

 芸能界もプロ野球選手と同じで、レギュラーの数は決まっている。ケガをした選手が、ポジションを奪われたくないといって体調が万全でないまま復帰。再び故障すれば引退も覚悟しなくてはならない。すべて自己責任ということになる。

 ピエールについてはバンド活動での復帰の方がハードルはやや低かったと思うが、少なくとも彼はそれを選ばなかった。さあ、その結果がどうなるのか見ていこう。

(城下尊之/芸能ジャーナリスト)