吉岡里帆、父を待つ人の不安、寂しさ、悲しみ、信じる気持ちを表現…Fukushima50連載〈5〉

引用元:スポーツ報知
吉岡里帆、父を待つ人の不安、寂しさ、悲しみ、信じる気持ちを表現…Fukushima50連載〈5〉

 命がけの対応をした原発作業員の奮闘を描いた映画だが、作業員と家族による人間ドラマでもある。吉岡里帆(27)は、佐藤浩市(59)が演じた伊崎利夫の娘・遥香役を務めた。事故対応の最前線で体を張る父の帰りを避難所で待つ役どころだ。

 佐藤と撮影現場で初めて顔を合わせた日のことを鮮明に覚えている。「懐が広くて、温かい方だなと思いました。過酷な撮影が進んでいる時期だったので、不安や苦しさ、葛藤を抱えて役柄とシンクロしているように感じました」。作業員になりきった佐藤の真剣な表情を見て「私も責任を持って、慎重に丁寧に覚悟を決めて仕事をしなければ」と気を引き締めた。

 避難所に身を寄せる場面の撮影は、とにかく寒かった。「一つだけストーブが置いてあって、全員が集まって、たわいもない会話をすると、少し寒さが和らぎました。実際の避難所でもこんなふうな時間があったんじゃないかなと想像しました」。近所に住む避難住民役を演じた泉谷しげる(71)がムードメーカーとなり、「すごくパワフルな方で、活気づけていただきました」とベテラン俳優の配慮に感謝した。

 若松節朗監督(70)からは「無事に帰ってくることを待つ人の不安、寂しさ、悲しみ、信じる気持ちを表現してほしい」と求められた。2011年3月の震災当時、地元の京都で学生生活を送っていたため、撮影前に資料や写真を見て「知らないことが多くて恥ずかしくなったし、心が痛くなった」。だからこそ「たくさんの人に知ってもらいたい」と全身全霊で撮影に臨んだ。

 映画には津波や地震など震災の記憶を思い出させる場面もある。「胸が苦しいけど、目を背けてはいけない。こうやって勇敢に闘った人たちがいて、今もその問題は続いている。この映画は福島への希望と応援の意味もある」と思いを込めた。(有野 博幸)

 ◆吉岡 里帆(よしおか・りほ)1993年1月15日、京都府生まれ。27歳。2015年度後期のNHK連続テレビ小説「あさが来た」で注目され、17年のTBSドラマ「カルテット」などに出演。19年公開の主演映画「見えない目撃者」などで第43回日本アカデミー賞新人俳優賞受賞。特技は書道。 報知新聞社