作詞家と歌手はSとMの関係…「歌謡曲の魅力」をギャランティーク和恵が解説

引用元:TOKYO FM+
作詞家と歌手はSとMの関係…「歌謡曲の魅力」をギャランティーク和恵が解説

さまざまな趣味と娯楽の奥深い世界をご紹介するTOKYO FMの番組「ピートのふしぎなガレージ」。1月18日(土)放送のテーマは「歌謡曲」。歌謡ユニット・星屑スキャットのギャランティーク和恵さんに「歌謡曲の魅力」について伺いました。

── 星屑スキャットってどんなユニットなんですか?

もともと新宿二丁目でドラァグクイーンなどでソロ活動をしていた3人が、歌謡曲を歌うイベントをやったのが最初でした。ドラァグクイーンの人たちは洋楽の口パクが多かったので、歌謡曲が好きな私たちはちょっと特殊だったんです。そこにたまたま2000年くらいから世の中で歌謡曲を再評価するブームがあって、私たちが趣味でやっていたものにどんどん需要が出てきて……みたいな感じでした。

── 歌謡曲ってどういう音楽を指すのでしょう?

人によって微妙にニュアンスが違いますが、大体1960年代後半~1980年代の終わりごろまでの曲を指すことが多いですね。なぜそこの年代かと言うと、職業作曲家が生まれたからです。それまではレコード会社に専属作家がいて、その人が書いた曲は所属するレコード会社からしか出せませんでした。歌手もレコード会社に所属して、専属作家の先生に曲を書いてもらわないと、レコードを出すこともできなかったんです。

でも1967年くらいに職業作家が出てきました。有名なところでは筒美京平さんがそうですね。作曲家がレーベルに関係なく曲を書けるようになって、歌手も制限から解放されて、すごく面白い音楽が生まれたんです。それがJ-POPのルーツになったと言っても良いかもしれません。

── 歌謡曲の魅力はどの辺にありますか?

私が考える歌謡曲は歌が主役。歌謡曲は、作詞家さんと作曲家さんと歌い手さんの三角関係で成り立っている世界で、そこがシンガーソングライターとは違います。歌手は「これを歌え」と言われたら歌わなきゃいけないので、ある意味、作詞家さんがSで歌手がM、みたいなSMの関係ですね。作詞家の先生はアイドルの女の子の曲に、少し卑猥なことをイメージさせる言葉をわざと入れたりしますから。

例えば山口百恵さんの「ひと夏の経験」は“あなたに女の子のいちばん大切なものをあげるわ”という歌い出しです。こんな当時の年ごろでは恥ずかしくて言えないような言葉をあえて言わせ、歌手はそれでもちゃんとプライドを持って表現する。そんなところも歌謡曲の面白さだと思います。

── ギャランティーク和恵さんのおすすめ昭和歌謡を1曲教えてください

岩崎宏美さんが結婚されて益田宏美という名前に変わる1988年に、「未成年」という曲を出しているのですが、結婚するくらいの年になると染みる曲です。私は今、毎晩聴いて、目から涙があふれています。聴く人間の年齢によって感じ方に変化があるのも歌謡曲の良いところですね。

(TOKYO FM「ピートのふしぎなガレージ」2020年1月18日(土)放送より)