『劇場版SHIROBAKO』吹き出す観客続出 「万策尽きた!」から共感の展開へ

引用元:マグミクス
『劇場版SHIROBAKO』吹き出す観客続出 「万策尽きた!」から共感の展開へ

 2020年2月29日(土)、劇場アニメ『劇場版SHIROBAKO』が公開されました。アニメ『SHIROBAKO』は2014年から2015年にかけてTVシリーズが放送され、アニメ制作の現場をコミカルに描き、注目された作品です。

【画像】主題歌「星をあつめて」も高評価

 主人公の宮森あおい(CV:木村珠莉)は、劇中のアニメ制作会社「武蔵野アニメーション」(通称:ムサニ)の制作進行。アニメ制作において、「原画」「動画」などの職種よりも認知度の低かった「制作進行」という職種です。『SHIROBAKO』放送後は、制作会社への就職にあたり、制作進行を志望する応募者が増えたという逸話もあります。

『劇場版SHIROBAKO』は、現実世界と同じくTVシリーズ放送から4年後が舞台。かつてアニメ制作で多忙な日々を送る仲間たちで賑わっていたムサ二は、廃墟のような外観に。仮眠から目を覚ました宮森は、人気がまばらな事務所でかつてのムサニを思い、表情を曇らせます。

 制作途中であった作品がトラブルでお蔵入りしたことをきっかけに、仲間たちは散り散りに。従業員にカレーを振る舞っていた丸川社長(CV:高木渉)は退き、元ラインプロデューサーだったナベPこと渡辺(CV:松風雅也)が後を引き継いでいました。

 しかし、ムサニにも転機が訪れることに。オリジナル劇場アニメを制作するため、かつての仲間たちが続々と集結します。

 アニメ流行語にもなった元制作デスクでケーキ屋に転職した本田の迷言「万策尽きた!」も、ファンサービスとばかりに大判振る舞い。懐かしい仲間たちの「その後」が描かれていきます。太郎(CV:吉野裕行)のウザさと、木下監督(CV:檜山修之)のダメっぷりは相変わらずで、上映中、吹き出すのを我慢しきれなかった観客が続出しました。 『劇場版SHIROBAKO』吹き出す観客続出 「万策尽きた!」から共感の展開へ 『劇場版SHIROBAKO』キービジュアル (C)2020 劇場版「SHIROBAKO」製作委員会

観客が共感するのは、「他人事」ではないから

『SHIROBAKO』の舞台であるアニメ制作の現場は、アニメファンにとっては関心があるものの、詳しくは知り得ない世界です。とはいえ、働く人たちの姿は誰しもに重なる部分があります。

 劇場版の新キャラクター・宮井楓(CV:佐倉綾音)は、アシスタントプロデューサーという立場で宮森と仕事を共にすることに。クールでできるタイプ……と思いきや、「素」の姿に「会社員あるある!」と共感してしまいます。

 宮森をはじめとする、TVシリーズのメインキャラクターたち5人は4年の月日が経つ間、立ち位置が変わっています。劇場アニメ制作では、プロデューサーという立場になった宮森。渡辺に「うちのエース」と評価されながらも、仕事への向き合い方への迷いが消えません。

 アニメーター・安原絵麻(CV:佳村はるか)は、作画監督を任されるまでに成長していますが、立場が上がったなりの結果を求められ、応じられないことに思い悩んでいます。

 3Dクリエイターの藤堂美沙(CV:高野麻美)は自分の能力が上がった分、後輩に同じように求めてしまい、苛立ちを覚えている状況。

 声優の坂木しずか(CV:千菅春香)は順調に仕事が増え、人気も出てきているものの、方向性に納得がいっていない様子です。憧れの職業で仕事を得られても、それがゴールにはなり得ません。

 今井みどり(CV:大和田仁美)はプロの脚本家として活躍していますが、やはり順風満帆とはいえず……。

 仕事をしていく上で発生するトラブルや、社内外からの無理難題。出来事そのものは違っても、人間関係や自身のスキルの悩みは、多くの人にとって共感できる部分があるのではないでしょうか。

『SHIROBAKO』はフィクションで、業界関係者からは「実態はあんなに綺麗じゃない」という声も聞かれます。ですが、生き生きと動くキャラクターひとりひとりの心情の描かれ方はとてもリアルです。

 3月2日(月)に発表された「ぴあ」映画初日満足度ランキングで第1位となった『劇場版 SHIROBAKO』。「感動した」「最高だった」という感想がネット上で多く聞かれるのも、「自分ごととして共感できる作品」であることもひとつの理由ではないでしょうか。

(C)2020 劇場版「SHIROBAKO」製作委員会 マグミクス編集部