自宅全焼直後に記者を圧倒した79歳 放火疑い激怒、すさまじかった迫力…宍戸錠さんを悼む

引用元:スポーツ報知
自宅全焼直後に記者を圧倒した79歳 放火疑い激怒、すさまじかった迫力…宍戸錠さんを悼む

 「エースのジョー」の愛称で親しまれた俳優の宍戸錠(ししど・じょう)さんが21日未明、都内の自宅で亡くなっているのが見つかった。86歳だった。死因など詳細は不明だが事件性はないという。1950年代に日活の第1期ニューフェイスに合格し、石原裕次郎さん(享年52)、小林旭(81)らと一世を風靡(ふうび)。頬を膨らませる整形手術でも知られた。2006年に虚血性心不全で手術、13年に自宅が全焼してからは表舞台に出てくることも減っていた。葬儀・告別式の日取り、喪主は未定。

 オーラと熱量を目の当たりにした。2013年2月5日、都内の宍戸さん宅で起きた火災を取材。本人の様子が知りたく近所を聞き回ってもネタをつかめず、諦めてファミレスで原稿を書こうと思ったら奥で当の宍戸さんが食事していた。

 記者の親よりも上の世代。リアルタイムでの宍戸さんは知らなかったが、絶対本人だという確証を持てた。ボサボサの白髪頭に黒ずくめの服。自宅を失ったショックと、警察・消防による長時間の実況見分で背中は丸まっていたが、端正な顔に大柄な体から出る雰囲気はレストラン内でも隠しきれていなかった。

 傷心かつ食事中。おそるおそる「報知新聞ですが宍戸さんですか?」と聞くと「そうだよ。お騒がせしました」と気さくだった。「こんな時に…」と沈痛な心境を思いながら話を聞こうとしたが、思いもよらないことになった。「誰かが火を付けやがった!」「前からおかしいと思ってた。最近は枕元に木刀を置いて寝ていたんだ!」…。原稿の締め切り時間が迫り、ポケットの中では会社からの着信で携帯電話が震えっぱなしだった。それでも宍戸さんは話せば話すほど、怒りが増幅するようで止まらない。

 事件を取材する際、さまざまな可能性を考えないといけない。放火か失火か、それとも…。だが宍戸さんの怒りは本物にしか見えなかった。大きく目を見開き「俺は誰にも負けないんだ!」「犯人は、サダム・フセイン子が一昨年に死んだのを知って侵入しやがった!」「捕まえて犬に食わしてやる!」。当時のノートを見返すと、エースのジョーの熱気に影響されたのか私の字も殴り書きの連発。会話のところどころに独裁者の名前が出てくるのが気になったが、確認すると「サダム・フセイン子」は飼い犬のシェパードの名前。その前の犬は「ムサシマル子」だったという。

 殺し屋などハードボイルドな役で時代を築いた宍戸さん。当時80歳近くだったが、その迫力はすさまじかった。(浦本 将樹) 報知新聞社