“夫”がゲイの能町みね子さん「恋愛感情ナシの結婚生活だから快適」

“夫”がゲイの能町みね子さん「恋愛感情ナシの結婚生活だから快適」

「恋愛には終わりがある。だから私は、恋愛関係になる可能性がない人と結婚しました」――。恋愛結婚をした人には信じられない話だが、果たして本当に幸せなのだろうか? 「結婚の奴」(平凡社)で新しい結婚観を提示した能町みね子さん(40)に聞いた。

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 能町さんが「夫(仮)」と呼ぶ相手は、ゲイライターのサムソン高橋さん(52)。2016年に“結婚生活”をスタートさせ、一つ屋根の下で快適に暮らしているというが、能町さんは、もともと恋愛感情が湧きにくい”非恋愛体質”で、そのことにコンプレックスを抱いていたという。

「みんなが普通に恋愛を楽しんでいるのが純粋に羨ましかった。それと同時に、自分は没頭できない不条理さに腹が立っていたんです。よく失恋のショックで何も食べれなくなると聞くけれど、そういう経験は一切なし。恋愛感情なるもので食が細くなることは皆無でした(苦笑い)」

 それでも結婚に対する憧れは人一倍あった。世間的な常識に対し保守的だと自認している。

「伝統文化である相撲が好きなのもそうなのかなぁと。結婚も子孫存続と繁栄、家と家の結びつきを重んじた文化的な側面は嫌いじゃない。でも、その古臭さが非常に嫌でもある。私のようにわざわざSNSで結婚宣言したり、エッセイのネタにする必要はありませんが、そうでもしないと、自分の性格や性質を考えたら踏ん切りがつかなかった。結婚することで自分の中の古臭い固定概念をひっかきまわしたかったんです」

 パートナーと情熱的に愛を誓い合うのが無理ならば、端から恋愛なんてしなければいい――。「脱・恋愛」で見事、理想の生活を手にした能町さんは、新しい結婚のあり方としてこんな提案する。

「世間でいう女性の幸せは、いまだに『好きな人と結婚する』という考えが多いですよね。けれど私のように恋愛の過程で躓いてしまう人は、開き直って、人生を効率よく快適に生きるための一つの手段として『脱・恋愛』からの結婚を考えてもいいのではないでしょうか。恋愛が苦手な人間は無理してする必要はないと思うんです」

■「人生の節目」

 一人暮らしのときは精神的に不安定になると仕事がはかどらず、部屋も汚くなる悪循環があったという。もちろん、問題や悩みがすべて消えたわけではないが、夫との同居生活でこれまで感じていたモヤモヤとした生活ストレスからは多少なりとも解放された。能町さんにとってあらためて結婚とは?

「『人生の節目』ですね。大学を卒業し、就職して以降、区切りがなかった私のダラダラとした人生に”一本の線引き”ができた。保守的な性分には大事なことでした」