今泉力哉、答えが出ない問いを映画に 恋愛を描き続ける理由

今泉力哉、答えが出ない問いを映画に 恋愛を描き続ける理由

 “恋愛映画の旗手”として大きな注目を浴びる今泉力哉監督。さまざまな片想いを描いた映画『mellow メロウ』(公開中)をめぐって、今泉監督が恋愛映画を撮り続ける理由について語った。

主演は田中圭!今泉力哉監督『mellow メロウ』予告編【動画】

わかりやすい悪人がいなくても、物語は作れる

 昨年、角田光代原作の『愛がなんだ』で大きな注目を浴び、続けざまに伊坂幸太郎の小説をもとにした『アイネクライネナハトムジーク』が封切られた今泉監督。田中圭を主演に迎えた『mellow』はオリジナル脚本による作品で、今泉監督作品らしい恋愛群像劇が展開されていく。企画段階から「好きなものを」と言われていたという本作だけに「興味がある恋愛ものに自然となっていきました。大きな事件もなく、日常のやり取りやたくさんの片想いがあるだけで映画にならないかな、というのが頭にあったんです」と明かす。 オリジナル脚本ならではの産みの苦しみもあったようで「今回は選択肢が無限なぶん、脚本を書くのに苦労して……。自由なことの不自由さというか。昔の小説家みたいにホテルを押さえられて缶詰みたいなことも初めて経験しました。でも、このご時世、ネットもテレビもあるし、場所も水道橋だったので『これ意味ある?』みたいな。結局、ホテル代がかかっているぞ、という圧だけ感じつつ、ホテルのそばの喫茶店に出かけて書いていました」。 今泉力哉、答えが出ない問いを映画に 恋愛を描き続ける理由 (C) 2020「mellow」製作委員会  そんな『mellow』では、花屋の店主・夏目(田中)をはじめ、父親から代替わりした廃業寸前のラーメン屋を営む女店主の木帆(岡崎紗絵)、夏目に恋心にも似た憧れの想いを抱く女子中学生(志田彩良)、夫がいながら夏目に告白する麻里子(ともさかりえ)など、登場人物のさまざまな恋模様が交差していくことになる。

 「想いを伝えてうまくいくことが目的でなくて、それを伝えるのか伝えないのか、ということを主題にしました。結婚しているのに誰かを好きになったり、女子中学生同士で告白したりという、誰かが咎めてもおかしくないことや、いまだに偏見がある同性愛などをあちこちに配置して、でもそのことを誰も咎めないし、ドラマチックな展開も呼ばない。わかりやすい悪人がいなくても物語は作れるはずだと思うんです」

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