映画コメンテーター有村昆が選ぶトム・ハンクス映画3選

映画コメンテーター有村昆が選ぶトム・ハンクス映画3選

1月のゴールデングローブ賞で功労賞授与が予定されている名優トム・ハンクス。ハリウッド映画の第一線で輝き続ける彼の魅力を有村昆に語ってもらった。

【写真を見る】映画『ビッグ』に出演したトム・ハンクス

「あらゆるジャンルや役柄を自分のものにしていて、つかみどころがない。それこそがトム・ハンクスの魅力だと思います」

80本以上を数えるトム・ハンクス出演作の中で、特にお気に入りなのが初期のヒット作『ビッグ』だ。

「『ビッグ』はトム・ハンクスが頭角を現した作品のひとつですが、今見ても傑作。キラキラした子どもの感情を表現する芝居が本当にうまい。特に足で弾く巨大ピアノのシーンは何度見ても胸が熱くなります。コメディー出身だからこそのポップさ、それが『ビッグ』のようなエンタメ作品の中でより輝くんです」

演技力だけでなく、たたずまいや性格にも魅力があるという。

「彼の人柄を語るエピソードとして、来日した時に都内のそば屋でサラリーマンたちと一緒に撮った写真があるんですけど、大御所なのに違和感がまったくない(笑)。この”隣にいそうな感じ”がよく出ている『めぐり逢えたら』は、普段着感たっぷりで自然体、圧倒的な親近感があります。日本人で例えると、田舎で地元の人に気さくに話し掛けちゃう笑福亭鶴瓶師匠みたいな感じですね(笑)」

トム・ハンクスは数々の名監督たちの作品に出演してきたが、やはりスティーヴン・スピルバーグとの仕事が印象的だ。

「演技でうまいなと思うのは、英語がまったくしゃべれないビクターという役を演じた『ターミナル』。ここでも彼の〝いい人パワー〟がさく裂して、最後には周囲の人がみんなビクターを応援しちゃう、という。スピルバーグ作品だと、最近も『ペンタゴン・ペーパーズ/最高機密文書』のようなシリアスな作品にも出演していますけど、スピルバーグの根っこは娯楽活劇にあるので、相性がすごく良いんですよね」

思えばいつの時代もトム・ハンクスには〝新作〟がある。この抜群の安定感も彼ならではだ。

「1993~1995年の『フィラデルフィア』『フォレスト・ガンプ/一期一会』『アポロ13』あたりが彼の黄金期かもしれませんが、それ以降も途切れることなく、常に主演としての重責を背負いながら作品に出演し続けています。役者には浮き沈みがあるはずなのに、彼はずっと波に乗っている。それが1980年代から現在まで…これは本当にスゴいことです!」

ありむら・こん●1976年7月2日生まれ、マレーシア出身。年間500本の映画を鑑賞。最新作からB級映画まで幅広い見識を持つ。映画コメンテーター以外に、長年ラジオ番組のパーソナリティーとしても活動。

取材・文=山崎ヒロト(Heatin’ System) HOMINIS