尾上菊之助に密着3000日、“ナウシカ歌舞伎”の舞台裏 ナレーションは中村倫也

引用元:オリコン
尾上菊之助に密着3000日、“ナウシカ歌舞伎”の舞台裏 ナレーションは中村倫也

 歌舞伎俳優・尾上菊之助(41)に密着取材したドキュメンタリー番組『密着3000日!尾上菊之助 新たなる挑戦~ナウシカ歌舞伎の壮絶舞台裏~』がテレビ朝日で1月4日(前10:30~11:30)に放送される。ナレーションを担当するのは、俳優の中村倫也。大ヒット映画で声優としても大活躍した中村が、“声”の力で、菊之助の軌跡を紡いでいく。

【写真】ナレーションを担当する中村倫也

 2019年12月、東京・新橋演舞場で上演された、新作歌舞伎『風の谷のナウシカ』(12月6日~12月25日)。“歌舞伎界の新たなる地平に挑んだ”と称されるこの作品を発案し、主人公・ナウシカを演じたのが菊之助だ。

 番組では“ナウシカ歌舞伎”の舞台裏とともに、歌舞伎俳優・尾上菊之助の魅力や知られざる素顔に迫った。密着日数は、なんと3000日。8年以上にわたって追いかけてきた、菊之助の“芸への思い”、“家族の絆”を映し出す。

 菊之助は、これまでもシェークスピアの原作を蜷川幸雄演出で上演した『NINAGAWA 十二夜』(2005年初演、07年に英ロンドンでも上演)や、インド神話を題材とした新作歌舞伎『マハーバーラタ戦記』(17年初演)など、新たな歌舞伎の魅力を発信するための作品を企画し、成功に導いてきた。

■“ナウシカ歌舞伎”3日目にまさかのアクシデント発生

 その菊之助が新たに挑んだ『風の谷のナウシカ』は、世界的アニメーション作家・宮崎駿氏の初期の代表作。歌舞伎舞台化は宮崎作品としてはもちろん、スタジオジブリの関連作品でも初めてのこと。菊之助はこの“ナウシカ歌舞伎”を自ら企画、約5年がかりで実現させた。それは、1982年より雑誌『アニメージュ』で連載された漫画版全7巻を歌舞伎化するという壮大な試みで、全六幕三十七場を昼の部、夜の部を通して上演。上演時間が7時間を超える大作となった。

 菊之助はどのように歌舞伎ならではの衣装や鬘、化粧を施し、主人公・ナウシカを演じたのか。ナウシカの故郷で辺境の小国“風の谷”、陸地の大部分を覆い尽くす“腐海”、ナウシカと対となる皇女クシャナ(中村七之助)を擁する王国“トルメキア”などの舞台大道具は?

 さらに、腐海最大の蟲“王蟲(オーム)”や巨大な人工生命体“巨神兵”などの創造物、そして“メーヴェ”“ガンシップ”をはじめとする飛行物体をどのように造形し、歌舞伎ならではの手法で操ったのか。菊之助とスタッフの前代未聞の挑戦を、カメラが追いかけていく。

 しかしながら、念願の幕が開いて3日目に、まさかのアクシデントが発生。菊之助が“トリウマ”というキャラクターに乗って花道から引っ込もうとしていた際に転落、左ひじの一部を亀裂骨折してしまったのだ。そのケガの直後に、腕を吊った痛々しい状態で思いを語る映像も見どころだ。

■“音羽屋”尾上菊五郎家の長男として生まれて

 番組では、新作歌舞伎『風の谷のナウシカ』のメーキングとともに、歌舞伎の名門、“音羽屋”尾上菊五郎家の長男として生まれた菊之助の魅力に迫る。人間国宝である父・菊五郎、女優・富司純子、姉・寺島しのぶという役者一家の長男として生まれた菊之助にとって、歌舞伎俳優となることは必然だった。

 菊之助は、代々の尾上菊五郎がそうであったように“兼ねる役者”として、“女方”と“立役”の両方を演じることで知られている。可憐な美貌と清廉な色気を持つ女方としての評価は揺るぎなく、その一方で、近年は音羽屋ゆかりの粋でいなせな立役を父・菊五郎から継承している。

 そして2013年には、人間国宝である中村吉右衛門(播磨屋)の四女・瓔子さんと結婚。音羽屋(尾上家)と播磨屋(中村家)を結びつけたことで、音羽屋の芸を守りながら、播磨屋の芸を自らに、そして息子である七代目・丑之助(和史くん、5歳)に受け継いでいくという、歌舞伎界でも稀有な使命を得ることとなった。

 19年5月には息子・和史くんが、丑之助として『絵本牛若丸』の牛若丸役で初舞台を経験。同役は、菊之助も6歳で六代目・丑之助として初舞台を踏んだ際(1984年2月)に演じており、菊之助は父・菊五郎が演じた“御厩鬼三太”を演じる予定だった。

 しかし、祝幕の原画を依頼した宮崎駿氏が描いた牛若丸と弁慶の絵を見て、急遽、弁慶役への変更を一大決意。菊之助にとって弁慶は初役だったが、息子の初舞台を盛り立てるために挑んだ。

 番組では、その丑之助初舞台はもちろん、和史くんが生まれた直後の14年正月、音羽屋一門が集う新年会で息子を抱く菊之助の貴重な映像をはじめ、菊之助と当時4歳の和史くんの初共演(2018年3月、『髪結新三』丁稚長松)の映像)、岳父・中村吉右衛門、菊之助、丑之助が同じ舞台に立った『義経千本桜~寺子屋』(19年9月)の舞台を交え、菊之助・丑之助父子の絆も見せていく。