『斉木楠雄のΨ難 Ψ始動編』のアフレコ現場の様子を監督・桜井弘明と斉木楠雄役・神谷浩史に直撃インタビュー 「4分間をいかに早くどれだけ面白く駆け抜けられるかっていう作品ですから。」【インタビュー前編】

『斉木楠雄のΨ難 Ψ始動編』のアフレコ現場の様子を監督・桜井弘明と斉木楠雄役・神谷浩史に直撃インタビュー 「4分間をいかに早くどれだけ面白く駆け抜けられるかっていう作品ですから。」【インタビュー前編】

 2016年から始まり、2018年に「完結編」が放送されたアニメ『斉木楠雄のΨ難』が、NetflixでΨ始動する。今作では主人公・楠雄に降りかかるΨ(災)難も、演じるキャスト陣の負担も、これまで以上にパワーアップしているようだ。「超!アニメディア」では、本作の監督である桜井弘明と楠雄を演じる神谷浩史に「Ψ始動編」のアフレコの様子をインタビューした。今回は前編をお届けする。――『斉木楠雄のΨ難』といえば、膨大なセリフ量を早口で尺のなかにピッタリと収めるキャスト陣の技が光る作品として印象的です。今作のアフレコにおける桜井監督からのディレクションで、とくに神谷さんのなかで印象に残っていることは?

桜井 ディレクションなんてほとんどしていないよね。

神谷 そうでもないですよ。でも、ディレクションというより、桜井監督がスタジオでとても楽しそうにしていた印象が強いですね。アフレコの最終話が近づくにつれて、役者がいるブースのほうに桜井監督がやたらと入ってくるんです。TVシリーズのときからそういうことはあったし、コミュニケーションをよくとってくださる監督なのでありがたいんですけど……なかなか出ていかないなと(笑)。「いや~、『斉木楠雄』は楽しいね!」「始まると終わっちゃうね」って言うんですけど、「こっちは必死なんじゃ!」という感じで。「さびしいんでしょ?」って聞いたら「そうだよ!」って言ってましたね。

桜井 さびしいんだよ! 図星だよ(笑)! お芝居の話は、みなさんもう知っているから言うことはないんです。それよりも、また集まれたことがうれしくて。第1期が終わったあと第2期で集まれたこともうれしかったんですが、「完結編」でまた集まれて、そして今回「Ψ始動編」ですから。

神谷 本当に恵まれた作品ですよね。

――桜井監督から見て、神谷さんのお芝居はいかがですか?

桜井 楠雄は淡々としゃべらなきゃいけないんですが、そのなかでセリフによってはちょっと感情が出るときがあるんです。その塩梅は神谷くんに任せていて、僕からは何も言いません。そして、感情を出すか出さないか、出し具合はというのは、そのときに神谷くんのお芝居を聞いて、「あ、こうきたか。はい、いただき」と。それがまた面白いですね。
 僕はもともと役者の方に「こういう芝居をしてほしい」みたいなことはあまり言わないんです。みなさん、アフレコに来る前に考えてきているから。ほかの作品ではそれがもし違ったら「もうちょっとこっち方向で」と直すこともあるんだけど、『斉木楠雄』に関しては本当に「みなさん、よろしくお願いします」ってお任せしていますね。

神谷 役者陣もみんな、自分のなかに課題を作って、そのハードルを越えるために頑張る感じだったと思いますよ。

桜井 みなさん、アフレコ前にそれぞれの家で映像をチェックしてセリフを練習してくるんですが、いつも「(セリフが)入らない!」って言いながらアフレコ現場に来るんです。でも、みんなでやると相乗効果でテンポアップしちゃって、逆に尺を余らせる人まで出て。

神谷 とくに女性陣はポテンシャルが高いですね。(照橋心美役の)茅野愛衣ちゃん、(梨歩田依舞役の)M・A・Oちゃん……。

桜井 (夢原知予役の)田村(ゆかり)さんもね。本当に早口がすごい。

神谷 この3人は尺に入らないってことはなかったですね。

――今作はNetflix独占配信ということでエピソードを作るうえで尺の制限がなくなったかと思いますが、それによってTVシリーズ制作時と変わったところはありましたか?

桜井 とくに影響はないです。今回も、これまでどおりのフォーマットでやっているので。

神谷 そういえば、Netflixなら尺は関係ないじゃん! 必要な尺を使えるんだ!

桜井 そうなんだけど、『斉木楠雄』の場合は、尺が増えたらそのぶんセリフが増えるだけなんだよね。

神谷 あのテンポ感は変わらないんですね。

――では、神谷さんとしては、今回、少し楽になったということは?

神谷 ないと思います。でも、たしかに『斉木楠雄』はそもそもそういう作品ではないんですね。4分間をいかに早くどれだけ面白く駆け抜けられるかっていう作品ですから。

桜井 そう。ただ、一方で必要な間というものもあるので、そのバランスを取りながら作っています。卒業式のエピソード(第2期第3χ第5話「卒業おめでとうごΨます!」)なんかは、PK学園の校歌を聴かせるための間を取らなきゃいけないから、それだけセリフを落とさなくちゃいけない。あのエピソードは「セリフをカットしすぎでは」という視聴者の意見もあったんですが、楠雄が「なんだこの校歌」って言うためには一番に校歌をちゃんと聴かせなきゃいけないんです。

神谷 そういうせめぎあいのなかで生まれた4分間だからこそ、価値があるんでしょうね。

後編に続く

<プロフィール>
【さくらい・ひろあき】手がけた主な作品は『ピアシェ~私のイタリアン~』監督、『まちカドまぞく』監督ほか。

【かみや・ひろし】1月28日生まれ。千葉県出身。青二プロダクション所属。主な出演作は『ワンピース』トラファルガー・ロー役、『進撃の巨人』リヴァイ役ほか。

■Netflixオリジナルアニメシリーズ『斉木楠雄のΨ難 Ψ始動編』作品情報
やれやれ、ついにΨ始動だ。爆笑! 超能力(*サイキック)コメディ!!
高校生・斉木楠雄は超能力者である。テレパシー、サイコキネシス、透視、予知、瞬間移動、千里眼など、何でもかんでも自由自在。誰もがうらやむ最強の能力は、実は本人にとっては災難を呼ぶ不幸の元凶。それ故、人前では超能力を封印し、目立たず人と関わらずをモットーにひっそり暮らしていた。しかし何故だか彼の周りには、いつも個性的な人間(生き物)が集まって、次から次へと嵐のように災難が降りかかるのであった!

(C)麻生周一/集英社・PK学園R 後藤悠里奈