ハリウッドから追放された問題児・デニス・ホッパーが訴えたかったもの 幻の映画「ラストムービー」31年ぶり公開

引用元:夕刊フジ

 【話題の映画ウラのウラ】

 デニス・ホッパーの幻の映画「ラストムービー」が31年ぶりに20日から公開される。デニスといえば、1969年に「イージー・ライダー」が大ヒット。一世を風靡(ふうび)し、時代の寵児(ちょうじ)となった。だがその後、不遇な時代を経験したことはあまり知られていない。

 ジェームス・ディーン亡き後の次世代スターと目されたのがデニス。そして「イージー・ライダー」が映画史上空前の興行収入をたたき出し、順風満帆と思われた。

 ■自ら主演・監督

 しかし自身が監督・主演を務めた念願の第2作「ラストムービー」は71年のベネチア国際映画祭では好評だったが、その内容の特異さ、難解なストーリーでユニバーサルからダメ出しを食らってしまう。再編集を強要されたが、デニスはこれを断固拒否。そのためお蔵入りになってしまった。そしてこの騒動でハリウッドから約10年間干されることになったのだ。

 主人公のカンザス(デニス)はスタントマン。ビリー・ザ・キッドをもとにした映画撮影でペルーの小さな村にやってくる。連日の西部劇の撮影を好奇に満ちた目で見ていた村人たちは、その映画製作をマネして儀式を始める。現地の女、マリアと暮らすようになり、酒とドラッグに溺れたカンザスはそれに巻き込まれ、現実と虚構との境を見失っていく。

 映画の中の死と実際の死との区別がつかない村人たちは、処刑という行為を撮影クルーやカンザスたちに迫っていく-というもの。

 シュールで複雑なプロットを理解しなかった制作会社の経営陣は、この過激な内容に異を唱えたわけだ。映画が芸術か、単なる金もうけの道具かは、よみがえったこの映画で判断すべきだろう。

 大監督ヘンリー・ハサウェイに楯突いてワーナーをクビになり、この作品でハリウッドから追放された問題児デニスがようやく復活したのは80年の「アウト・オブ・ブルー」でのことだった。(望月苑巳)