女心つかむ秘訣は読者の直筆ハガキ…“10万部完売”60代ファッション誌の舞台裏

引用元:ENCOUNT
女心つかむ秘訣は読者の直筆ハガキ…“10万部完売”60代ファッション誌の舞台裏

 もう「シニア」とは呼ばない。代わりに使う言葉は「素敵な世代」――。60代の女性向けファッション誌「素敵なあの人」(宝島社)が9月の創刊から話題を呼んでいる。人生100年時代といわれる中で、若い頃から日本のファッション・文化を牽引してきた60代の活発な生き方に着目し、これまでに取り扱いのなかった世代向けの雑誌で、創刊から2号連続で10万部が完売。貫かれているのは、「年を取るのは怖いことではない」「おしゃれはいくつになっても女性をワクワク幸せにしてくれる」という信念だ。ニーズに的確に応え、“売れる”雑誌を生み出す秘訣に迫った。

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「いまの60代のファッション感覚は、40代に近いセンスなんです」

 同誌の神下敬子編集長はこう強調する。60代女性のおしゃれへの欲求や心理をとらえ、ファッションも美容も健康の上に成り立っているという考えをベースにする雑誌作り。肌ざわりや動きやすさを重視する服装を提案し、靴選びについてはヒールではなく、ファッションアイテムとして認知度の高まるスニーカーを特集。毎号に姿勢やストレッチのコーナーを設けた。ダイエットではなく、60歳を超えた体型に合わせた“着やせ”をテーマにする企画など、きめ細やかな視点にあふれている。

 神下編集長が着目したのは、「シニア」とひとくくりにされがちな高齢世代に対する考え方だった。神下編集長自身、60代について“引退した世代”といったステレオタイプなイメージを持っていたというが、60代向けのインテリアの本を作成したことがきっかけで、ハイセンスな感覚を持つ世代であることに気付いた。

 60代は「non-no(ノンノ)」(集英社)や「an・an」(マガジンハウス)を読んで育ち、若者文化を引っ張ってきた世代だ。「この世代は『終わった世代』なのか。そうではない。調べていくと、50代以上の個人消費は活発であり、特に60代は子供の教育費の負担がなくなり、経済的にぐっと余裕がでる世代だということが分かりました。それに60代の女性たちから、『お金を使いたいのに、自分たちのための商品や雑誌がない』『若い時と比べて体型が崩れている。よりおしゃれのコツが必要なのに教科書がない』という声を聞きました。読者が喜ぶような新しい市場をつくることに意味があると考えました」と説明する。