ポーランドの映画ポスター展覧会、国立映画アーカイブで明日開幕

引用元:映画.com

 [映画.com ニュース] 東京・京橋の国立映画アーカイブで、12月13日から展覧会「日本・ポーランド国交樹立100周年記念 ポーランドの映画ポスター」が開催される。スタートを翌日に控えた12日、報道向けの説明会が行われた。

 日本とポーランドの国交樹立100年を記念する企画として、国立映画アーカイブと京都国立近代美術館が共催する本展覧会。1950年代後半から90年代前半までに制作された、国立映画アーカイブ所蔵品を中心とする計96点(展示期間の前期と後期で10点が入れ替わるため、常時展示数は86点)の映画ポスターが紹介される。ポーランド映画をはじめ、ヨーロッパ各国やアメリカ、そして日本映画のポスターなどバラエティ豊かなラインナップとなっている。

 第二次世界大戦後、ヨシフ・スターリン率いるソビエト連邦の強い影響下で、社会主義国としての道を歩むこととなったポーランド。しかし、50年代の中期からは社会主義リアリズムを脱却し、徐々に新時代のアーティストによる自由な表現が誕生した。その“雪解け”は映画とグラフィックデザインの分野で顕著であり、やがて「ポーランド派」と呼ばれるようになったという。

 ポーランド映画ポスターの特徴として挙げられるのが、人の顔を象徴化した表現が多いということ。ロマン・ポランスキー監督の「水の中のナイフ」は、ポスターに初めて「ポーランド派」という表現を用いたデザイナー、ヤン・レニツァの代表的作品で、3人の登場人物を3匹の魚で表現しており、がっちりと描かれた太い線が持ち味だという。イタリアのブラックコメディ「醜い奴、汚い奴、悪い奴」のイェジ・フリサクが手掛けたユーモラスなポスターは、人の顔が虫のように積みあがっており、スパゲティをすすっているというシュールなデザインだ。さらに、本展覧会のポスタービジュアルともなっているベルナルド・ベルトルッチ監督作「暗殺の森」は、ヤン・ムウォドジェニェツの手によるもの。太い線とくっきりした色遣いが特徴的な作風だ。そのほか、手がめりこんだ顔が描かれたフランスとポーランドの合作作品「ダントン」(前期展示)なども例に挙げられた。

 日本映画のポスターは、「七人の侍」「用心棒」「椿三十郎」など黒澤明監督作品をはじめ、「姿三四郎(1965)」「新幹線大爆破」や、「メカゴジラの逆襲」などゴジラ作品も展示。ヨーロッパ映画は「ロシュフォールの恋人たち」「地下鉄のザジ」「魂のジュリエッタ」「昼顔(1967)」など名作ぞろい。そのほか、ジム・ジャームッシュ監督の「ストレンジャー・ザン・パラダイス」やケン・ローチ監督の「リフ・ラフ」(どちらも前期展示)など、現在も活躍する監督たちの過去作ポスターも楽しむことができる。

 同館主任研究員の岡田秀則氏は、ポーランド映画ポスターが辿った独自の発展を、“制約の中の異常な自由”という言葉で語る。「社会主義国ですから、商業主義によりかかる必要がありません。いかにも売れるデザインを考える必要はなく、スターの顔を並べたりしなくてもいいわけです。アーティストがアーティストとして仕事ができて、不思議な自由があったようです」と解説。さらにポーランドは、同じく独創的なポスターが多数生まれたチェコ、キューバの先駆的存在であったといい、「チェコはシュールレアリズムの文化を引き継いでいるため、意外性のあるポスターを作ることが多い。ポスターからどんな映画か解読するという意味で言えば、チェコは解読するも何も別物というものもあります。しかし、ポーランドはポスターを通じて映画の世界を表現しようとする意志が感じられます」と紐解いた。

 初日となる12月13日の16時からはポーランドの巨匠を多数生んだウッチ映画大学のダグナ・キドン氏の講演会が行われる。「日本・ポーランド国交樹立100周年記念 ポーランドの映画ポスター」は、国立映画アーカイブで12月13日から2020年3月8日(前期展示は1月26日まで、後期は同月28日から)まで実施。その後、3月17日から5月10日にかけて、京都国立近代美術館へ巡回する。