志村さんの死が教えたコロナの怖さ…王貞治氏が小池都知事が訴えた

 タレント、志村けんさんが、新型コロナウイルスによる肺炎のため29日に70歳で急逝した。世代を超えて親しまれたスターの死は大きな衝撃となり、新型コロナウイルスの恐ろしさを国民に教えた。プロ野球ソフトバンクの王貞治球団会長(79)、小池百合子東京都知事(67)らは、パンデミック(世界的大流行)の阻止へ、外出自粛など自覚ある行動を訴えた。

 世界の本塁打王が、日本が誇った喜劇王の急死に、表情をゆがめた。東京都内で開かれた東京五輪・パラリンピック組織委員会の理事会に理事として出席した王球団会長は、志村さんの早すぎる死を悼んだ。

 「ショックだね。あれだけ世の中で頑張ってきた人、一緒に歩んできた人がコロナ(ウイルス)という理由で亡くなるなんて防ぎたかった…。これで(新型コロナウイルスについて)甘く考えている人が身近なことと受け止めてくれれば、亡くなったことは無駄にはならないと思う」

 野球、芸能と舞台こそ違え、ともに昭和の日本に元気を与え続けたスター。王会長の衝撃も大きく、国民に訴えるように語った。

 志村さんは23日に新型コロナウイルスの検査で陽性反応が出て、17日に発症したと確認された。志村さんは、ECMO(エクモ)とよばれる人工心肺装置を治療に使用していた。これは人工呼吸器でも救命が難しい重症者に使われる“切り札”だった。あっという間に重篤になったとみられ、発症から12日後の29日に亡くなった。

 新型コロナは高齢者ほど重症化しやすい。中国の約4万人を対象にした分析では、全体の致死率は2・3%でも、70代は8・0%、80歳以上は14・8%に跳ね上がる。しかし29日に東京都が発表した感染者68人のうち20代以下は20人、30代が24人と、合わせて全体の7割弱。感染が若者にシフトしつつあり、彼らが無意識にウイルスを拡散しているとみられる。

 28、29日の週末、東京都、神奈川県、大阪府などでは外出自粛要請が出され、繁華街や行楽地からは人影が消えた。若者が遊びに繰り出さず、中高年層も買いだめに走らない。非常事態にどれだけ節度のある行動を取れるかが、パンデミックを食い止める鍵になる。

 小池都知事は「最後に悲しみとコロナウイルスの危険性について、しっかりメッセージを皆さんに届けてくれた」と志村さんに感謝した。スターの死は、見えない敵を克服する困難な戦いに直面する国民に、かけがえのない教えを遺(のこ)した。