「10000時間練習したのに…」元セーリング日本代表が語る“オリンピック”で実力を出す難しさ

引用元:TOKYO FM+
「10000時間練習したのに…」元セーリング日本代表が語る“オリンピック”で実力を出す難しさ

荒川静香と高橋尚子がパーソナリティを務め、東京海上日動がお送りするTOKYO FMの番組「MY OLYMPIC」。かつての名選手から将来有望なオリンピック代表選手のタマゴまで、さまざまなアスリートの輝きをお届けしています。3月16日(月)~20日(金・祝)、23日(月)~24日(火)の放送では、“オリンピアンSP”と題し、元セーリング日本代表の山本悟さんにお話しを伺いました。山本さんは高校時代にヨットを始め、競技歴7年で日本代表の座を手にし、1984年ロサンゼルスオリンピックに出場を果たしました。その前年に開催された世界選手権では7位と、メダル獲得の期待を背負って挑んだ本番では、「これまでの経験がまったく活かされなかったというか、いつも多少の緊張はするんですけど、“オリンピック”という舞台に自然とプレッシャーがかかってしまって、最初のスタートのときに喉が枯渇してしまった」と振り返ります。

日本代表になるまでの間、およそ10000時間もの練習量を重ねてきただけに、「まさか自分が(本番で)そういう状態になるとは想像もしていなかった」と語ります。そして、もう1つ驚いたのは、前年の世界選手権からわずか1年で、他国の選手たちが非常に強くなっていたこと。

「オリンピックという舞台は、国際競争力がモロに出る。そして、選手を支える仕組みの違い、国の代表として、コーチングスタッフがいかにオリンピックに照準を合わせていたかの違いが、国力の差としてはっきりと分かれた。練習時間は世界一だったかもしれないけど、中身はあったのかとか、頭は使っていたのかと言うと、“練習量だけだった”ことが、1番大きな反省点だったと思う」と実感を語ります。

そんな夢の大舞台での反省点を踏まえ、山本さんは自身のため、ひいては後進の育成のために、大学卒業後に、もう1度体育学部に入り直し、コーチングの勉強をしたそう。「いくつかの団体や協会(日本セーリング連盟)からの依頼で、協会主催のイベントなどでコーチをしています」と話すように、現在は自身の競技経験や学んだことを活かし、指導者として力を発揮しています。

山本さんの現役時代とは異なり、情報化社会となっているだけに「試合で負けた経験を活かして、いかに他国の強豪国が強化をしているかを、分析・観察したりとか、日本人に合った強化方法など、協会のスタッフの方々が強力に推し進めてくれている」と語ります。なかでも、470級の選手たちの成長が目覚ましく、「世界のトップレベルに通用するようになってきている」と山本さん。

新型コロナウイルスの感染拡大の影響を受け、2020年東京オリンピックの延期が決まりましたが、期待の選手に、2018年の世界選手権で優勝した女子470級の吉田愛選手・吉岡美帆選手のペア、そして、2018年のワールドカップで優勝経験のある男子470級の岡田奎樹選手・外薗潤平選手ペアの名を挙げていました。

そして、改めて競技の魅力について、「(目で)見えない風を帆(セール)でとらえて、それをコントロールして、より速く走っていく。そのなかで、1番単純なのは“スピード”の違いで、次は“コース”。どの風をとらえて、どこに走るか。そして最後は“駆け引き”なんです。オリンピックという舞台は、その“究極の戦い”なんです。

単純に観ると、スピードだけなんですけど、そこには、コース取りや駆け引きがあるということを観ていただけると、少しセーリングが面白く観られると思います」とアピールしていました。