『あつまれ どうぶつの森』は、なぜ時間操作したくなるほど超スローライフなのか?

引用元:IGN JAPAN
『あつまれ どうぶつの森』は、なぜ時間操作したくなるほど超スローライフなのか?

「どうぶつの森」シリーズは、自由にスローライフを楽しむちょっと特殊なゲームだ。魚釣り、ガーデニング、インテリアデザインなど好きなことを見つけてやりたいことをすればいいわけだが、「毎日少しずつ遊ぶ制約」に困惑するときもあるかもしれない。
IGNのレビューでも「『あつまれ どうぶつの森』の序盤は極めてスローペースだ」と書かれており、筆者のSamuel Claibornが時間操作したことを述べている。もちろんこのペースが遅すぎると思う人もいるだろう。しかし、これこそが本シリーズのもっとも大きな魅力なのである。
時間操作をする人を咎めようというわけではない。むしろ、なぜこの制約がおもしろさを産むのか語りたいのだ。
「どうぶつの森」のリアルタイム連動による制約

「あつまれ どうぶつの森」画像・動画ギャラリー

最新作となる『あつまれ どうぶつの森』にも毎日の制約がある。1日にできることは限られており、ショップで売られているものも日替わり。本作では初日に川の向こう側に行けず、翌日以降に高跳び棒を手に入れて行けるようになるのだ。このように、物事が進むには次の日を待たねばならない。
なぜこのような間があるのか。いわゆるソーシャルゲームにも似たようなシステムがあるものの、あれはビジネルモデルからくる制約なので性質がまったく違う。『あつまれ どうぶつの森』はソーシャルゲームが出現する前から続く買い切りタイトルのため、リアルタイム連動ゲームとして考えるべきだろう。
通常のゲームは遊べば遊ぶだけ進行するわけだが、リアルタイムと連動させればゲームの進行はゆっくりになる。カノジョと日常を過ごす「ラブプラス」シリーズなどもそうだし、リアルタイム連動ではないのだが、作中の時間の流れが遅い「シェンムー」シリーズも似たような意図があると思われる。
しかし、アクションゲームで「今日は2ステージしか遊べません!」となったら不満だらけになるのは当然である。なぜわざわざそんな問題になりうる制約をつけるのかといえば、むしろそうしたほうがおもしろくなる作品もあるからだ。
“あえてゆっくり待つ”ことによる楽しみ

幼いころ、楽しみな日が待ち遠しくて仕方ないことはなかっただろうか。誕生日、クリスマス、旅行でもなんでもいい。筆者の場合は勉強机を買ってもらったのがうれしくて、届くのは数カ月後なのに時計の針を眺め続けたことがある。「まだかなあ」と思う間はドキドキしたし、今になってみると楽しみな時間があんなにも続くことは幸福だったと思う。
『あつまれ どうぶつの森』も同様だ。たとえば特定シリーズの家具を揃えたいと思ったプレイヤーがいたとして、一気にそれを手に入れられたらうれしいだろうか? もちろん喜ぶだろう。しかし、毎日待ちながら少しずつ揃えていって、時間をかけて全部揃ったらさらにうれしいのだ。
不便や待ち時間はときに楽しみを増幅させる。『あつまれ どうぶつの森』をプレイし始めると、すぐに高跳び棒やマイホームが欲しくなる。しかし、それが手に入るまでに間があったほうが後の喜びも増すし、「手に入れたら何をしよう」とじっくり計画を練る時間も手に入るのである。
ほかのゲームのように、次から次へとおもしろいことがワッと押し寄せてくるものも楽しい。けれども、強い刺激はすぐに慣れてしまう。何より、ひとつの喜びをしみじみと味わうゲームには向いていないのだ。

だからこそ、「どうぶつの森」シリーズは特別なスローライフゲームなのである。種を植えたらちょっとずつ花が成長して数日後に咲く。雑草だらけだった島が少しずつキレイになっていく。ある日たまたまもらった家具でインテリアデザインの方向性が見つかる。こういった日常のなかにある小さな喜びをじっくりと味わう、機微を感じやすくするためにあえて制約を用意しているのだ。
また、『あつまれ どうぶつの森』はNintendo Switchのセーブデータお預かり機能(バックアップ)に対応していない(ただし、セーブデータのバックアップは独自機能で対応予定) 。 これはリセットできなくすることと同義だ 。 たとえば1/10の確率で手に入るアイテムがあった場合、リセットしまくって強引に入手する方法と、時間をかけて運を天に任せる方法がありうる 。 本作ではプレイヤーに後者を選んでもらいたいのだ 。