あらゆる業界に不況をもたらす新型コロナ 人の心をすさめる「貧乏神」だ

引用元:夕刊フジ

 【桂春蝶の蝶々発止。】

 電話が鳴るたび、メールが来るたび、仕事の「キャンセル」の連絡ばかりです(苦笑)。ウチの経済は壊滅的ですわ。笑いは小さな不幸の寄せ集めだから素材が増えましたな(笑)。

 さて、新型コロナウイルスは世界を同時支配しています。われわれも自粛につぐ自粛で、エンタメ業界だけではなく、あらゆる業界に不況をもたらす状況となっています。

 しかし、実際のところ、日本では15日現在、死者22人(クルーズ船含まず)に留まっています。封じ込めに成功したかのように見えますが、そんなことはない。

 実は、日本国民の多くがコロナに感染しているのではないですか? 私たちの免疫力が上回っていただけの話だと思います。ウイルスを身体に入れないと抗体はできません。逃げても追いかけてくるのだから、私は諦めています。

 コロナの犠牲者とともに、この後の不況でダメージを受ける人も深刻です。きっと、自死する方も多いですよ。この状況は、ただただ人間の心をすさめるだけです。

 春のセンバツ高校野球(甲子園)は「無観客試合での開催」を検討した後に、中止を発表しました。ウイルスの感染拡大防止が理由とされていますが、無観客試合で、その条件の大半は満たされていたはず。

 私は結局、一部の人々の「なぜ、野球だけ開催するのか?」「不公平ではないか?」「宿舎などで球児に感染したらどうする」という意見に屈してしまったと思います。クレーマーに近いですよ。

 このセンバツの中止は、新型コロナのせいではない。もはや「天災」ではなく「人災」へと変化していると思います。中島みゆきさんの「ファイト」という歌ではないが、戦う人の行いを戦わない人が邪魔をしているんじゃないですかね。

 新型コロナウイルスは「死神」ではない。社会的リスクを背負いたくない、自分たちが感染を広げたと思われたくないというマインドが存在するのです。そう、コロナは今や「貧乏神」であり「疫病神」なんですね。

 それでも、正義感を振りかざす世論が「人命を何だと思っている!」と文句をつけたがる。

 そこまで言うなら、毎年1月には餅を喉に詰まらせたお年寄りが500人ほど亡くなっていますが、「お雑煮」を自粛させたらどうですか? 「おぜんざい」「あべかわ」「磯部焼」…全部自粛すべきです。お餅はコロナの何倍もの殺傷能力がありそうですからね。

 んなアホなことしないでしょ? でもいま、それと同じことをしてると思いますよ?(笑)

 ■桂春蝶(かつら・しゅんちょう) 1975年、大阪府生まれ。父、二代目桂春蝶の死をきっかけに、落語家になることを決意。94年、三代目桂春団治に入門。2009年「三代目桂春蝶」襲名。明るく華のある芸風で人気。人情噺(ばなし)の古典から、新作までこなす。14年、大阪市の「咲くやこの花賞」受賞。