不倫騒動くすぶる鈴木杏樹の続投を決めたニッポン放送初の女性社長の「胆力」

引用元:スポーツ報知
不倫騒動くすぶる鈴木杏樹の続投を決めたニッポン放送初の女性社長の「胆力」

 中年ど真ん中のこの年齢になると分かってくることがある。人生で逆境に立たされた時、どれだけ助けてくれる人がいるか―。その一点で人がどう生きてきたか、どう周囲の人間と真剣に向き合ってきたかが問われる。そんなことを感じる一幕があった。

 11日、東京・有楽町のニッポン放送で開かれた檜原麻希社長(58)の定例会見。新型コロナの余波が広がる中での会見とあって出席した記者全員がマスクをしているのを見た同社長は「あら、私たちもマスクをした方がいいかしら?」と、その場で幹部たちとともにマスクを着用した。

 日付は「3・11」。冒頭、「東日本大震災から9年のこの日、新型コロナと戦争状態というか、今まで我々が経験したことのない、人類が出口の見えない戦いをしている状態です」と真剣そのものの表情で話し始めた同社長。続いて、粛々とこの日のメインテーマである4月の番組改編内容を発表した。

 集まった記者たちが注目していたのは、“あの女優”の番組の存続だった。2月6日発売の「週刊文春」で俳優・喜多村緑郎(51)との不倫が報じられた鈴木杏樹(50)。配布された改編資料には結局、パーソナリティーを務めてきた「オールナイトニッポン MUSIC10」(月~金曜・後10時)の担当日を水曜日から火曜日に変更しての出演継続が明記されていた。

 鈴木は不倫を報じた「週刊文春」の早刷りが各マスコミに届いた2月5日は体調不良のため番組を欠席。同局のひろたみゆ紀アナウンサーが代役で出演した。同月12日の放送は歌手・森山良子(72)、19日には森山と女優・名取裕子(62)が代役を務め、26日の放送では森山と息子でシンガー・ソングライターの森山直太朗(43)で進行してきた。

 鈴木はパーソナリティーを務めてきた同局の別番組「鈴木杏樹のいってらっしゃい」(月~金曜・前7時37分)は報道を受け、2月6日に降板。3月4日に5週ぶりに「オールナイト―」に生出演すると、番組冒頭で「この度はお騒がせして、本当に本当に本当に申し訳ございませんでした。嫌な思いとか、不愉快な思いとか、残念な思いとか、傷つけてしまったりとか、裏切られたような思いをさせてしまって…。心の底からおわびします。ごめんなさい」と涙声で謝罪した。

 「これからの人生、心して歩んでまいりたい」とつぶやくと、不倫報道後に出演した広島や九州などでの舞台ではファンから励ましの花などを贈られたと明かし、「生きていく自信を失っていたので、本当にありがたかった」と、もう一度、声を震わせた。

 その後も騒動がくすぶり続ける中での今回の定例社長会見だっただけに「オールナイト―」出演継続か否かは大きな関心事となっていたのだ。

 舞台を水曜から火曜に移しての続投決定。4月以降の同番組は月曜日は森山、木曜日はタレント・渡辺満里奈(49)が引き続き担当。水曜日は1週目と3週目を名取が務め、2週目の歌手・森高千里(50)、4週目の歌手・岸谷香(53)が新たに加わることになった。

 自由質問になったとたん、鈴木続投の理由を聞かれた檜原社長は「ご存じのように『(週刊)文春』で不倫報道がなされて…。ご本人も非常に反省することがありつつ、すごく悩まれていて、お休みされていたわけですけど、3月4日の水曜日から復帰されました」と、まずは復帰までの経緯を報告した。

 そして、「実は多くのリスナーからは杏樹さんを9割方、応援するメールがず~っと、ずっと番組にも届いていました」と明かした上で「それから同じ『オールナイトニッポン―』の森山良子さんからもお電話をいただき、『同じ女性として反省すべきこともあるけれども、ぜひ、パーソナリティーとしての彼女を支えていきたいので、私が留守はいくらでも守りますよ』と、心から言っていただいて…。留守の間、森山さんだったり、名取裕子さんにつないでいただいた。復帰の日も森山さんがわざわざ生放送にも一緒に寄り添って、本人を励ましていただいた」と舞台裏を明かした。

 「(復帰の)放送では、多くの『お帰りなさい』というメールもいただいた。そうではない部分(批判)もゼロではないんですけど、大方は応援されているなと感じたので、彼女の復帰を心からサポートしようと思って、再開しました」―。檜原社長は最後まで粛々と続投決断の理由を語った。

 そう、鈴木の復帰の裏側には、森山、名取ら女性共演者たちの力強いバックアップがあった。さらに、檜原社長自身の存在も大きかったと、私は見る。慶大卒業後の85年に入局。デジタル事業局長、取締役編成局長などを歴任後、昨年6月に同局史上、いや、民放キー局史上初めて女性として社長に就任した人物。経営手腕に男女の差など存在しないことは分かっているが、男性比率が高いマスコミ業界、特にラジオ局でトップに登り詰めるまでの同社長の歩みは“女性ゆえに”平坦でなかったことは簡単に想像がつく。

 私自身のことも書いておく。90年代前半に鈴木が司会を務めたテレビ朝日系「OH!エルくらぶ」で出会い、そのシャープな顔立ちと明るい笑顔にファンになった。女優としても大人気ドラマ「相棒」の「花の里」の二代目女将・月本幸子は魅力にあふれた当たり役だと思っている。

 だが、どんなにいい女優だろうと、魅力があろうと、森山が口にした「同じ女性として反省すべきこともある」という言葉どおり、今回の騒動で鈴木は“加害者”だ。喜多村の妻で元宝塚トップスターの貴城けい(45)の悲嘆、怒りはしっかりと受け止めるべきだと思うし、貴城本人へのきちんとした謝罪も必要だと思う。

 それでも今回のパーソナリティー継続には1990年のデビュー以来、鈴木が女優として、タレントとして流してきた汗の量が大きく影響していると、私は思う。30年間、ずっと自分を磨き、生存競争の激しい芸能界で生き残る努力をしてこなければ、フジテレビ系「ミュージックフェア」の司会を95年から2016年まで歴代司会者最長の20年半務めることなんて、到底できなかっただろう。

 そんな努力こそが、森山らの懸命のバックアップを生み、賛否渦巻く中、堂々と続投を決めた檜原社長の胆力(物事を恐れたり気おくれしたりしない気力、度胸)たっぷりの決断を呼んだと思う。だからこそ、鈴木はこれからの番組でバックアップしてくれた「女性たち」に、応援してくれたリスナーたちに“恩返し”をしなければならない。私は、そう思う。(記者コラム・中村 健吾) 報知新聞社