「カレーは飲み物!」と言い放ったウガンダ・トラの思い出

「カレーは飲み物!」と言い放ったウガンダ・トラの思い出

【ダンカンの笑撃回顧録】#31

 クル、クル、クル~ン、カラン! お~、随分とここは賑わってる居酒屋じゃないのさ! とノレンをくぐって店内に入ると……。

「カレーは食べるものじゃなくて飲み物なのよ! ゴクゴクゴク」――おー!! カレーライスのお皿を口につけ、傾けるとそのまま一気にルーもごはんもスプーンで口の中に流し込んでいるー!! う~ん、お見事!!

 これぞ正しくデブタレのはしり、ウガンダ・トラさん(2008年、55歳没)の十八番のカレー飲みではないか!! ということは時代は90年代の後半、場所は丸ノ内線中野新橋駅から徒歩5分(ちなみに当時俺が住んでいたマンションから徒歩20秒)、中野本郷通り沿いにあった一見ゴミ屋敷と見間違いそうな居酒屋「信ちゃん」なのだ(現在は「信之助」に改名し、駅近くで営業)。

「カレーは飲み物」の名言が誕生したのは「信ちゃん」では毎週木曜日を「カレーの日」と決めていたからであったのだ。

 その「信ちゃん」には夜な夜な中野に住む芸人が集まったものである。我々たけし軍団はもちろん、ヒップアップの川上さんはしょっちゅう奥さんと喧嘩して泣きながら店にやってくるわ、下戸で一滴もアルコールを飲めない松村邦洋がなぜか悪酔いしたかのように店内で(だれも相手にしないのに)モノマネを永遠に続けるわ……などなど、それはさておき、ウガンダさんは実にムシャムシャカッカッズルズルベチャベチャモゴモゴとひたすら口を動かしている人であった。

 そしてまた、その食べ方が実にうまそうだったのが印象的なのだ。

 その食通(?)もあってか……自分でも当時大久保に「やきとりうがちゃん」という店を経営していたのです。

 何度かその店に足を運んだのだが、いつもウガンダさんは店にいて、接客のみならず調理までやる本格的な料理好きであったのだ。

■焼き鳥のエピソードもすごかったのだ

 うがちゃんに行き、焼き鳥を注文すると「この鳥皮もうまいんだよね」「あ、じゃ鳥皮もください」「それから、このカシラね! これ絶品ね!」「そう、でももう結構頼んでるし……」「大丈夫、うまいからケロッと食えちゃうから! サービスにしとくし!!」という言葉に言われたまんま注文すると……確かにケロッと食えた!! ただし、食えたのは注文した俺たちではなくて店の主人、そうウガンダさんだったのだ。

「ね、このタレが甘くてうまいんだよね~ムシャムシャ」「焼き加減が絶妙だし、さあ~モグモグ」と運んできた皿の焼き鳥を自分で食っちゃうんだから……。

 で、いざお勘定になると……、「え~っ、何がサービスなんだよ!! すべてキッチリと勘定に入ってんじゃねーか!!」、半分冗談で文句でも言おうもんなら、「でも、おいしく楽しく食べられたからいいじゃないー!!」と唇の横を脂でギトギトと光らせて愛嬌いっぱいの笑みを浮かべるのだった……。

「おいしく楽しく食べられたのは、おもにあなたですからー!!」と心の中で突っ込む俺たちだったのだ。

 あ、そーです、このウガンダさんの結婚話で聞くも涙、語るも涙の物語があったのでした。では、この後はそのお話を……。

 (つづく)

(ダンカン/お笑いタレント・俳優・放送作家・脚本家)