東日本大震災9年 フジとNHKがコラボ、災害報道を考える

引用元:産経新聞

 未曽有の被害をもたらした東日本大震災は、3月11日で発生から9年となる。テレビ各局は、復興に向けて変化する街の様子や、震災の記憶を語り継ぐ番組の放送を予定。近年の自然災害増加を背景に、放送局の壁やテレビとインターネットの垣根を越えて、災害時に犠牲者を減らすためにどのような情報発信をすべきか考えるコラボ特集も企画されている。(石井那納子)

■新たなリスクに備え

 NHKは7~14日に計4本の「NHKスペシャル」を放送する。このうち7日午後9時から放送するのは「東日本大震災40m巨大津波の謎に迫る」(番組名は仮。以下同)では、陸地の斜面をさかのぼって到達した津波の高さ(遡上(そじょう)高)が約40メートルと突出して高かった岩手県宮古市とその周辺に着目し、なぜこれほどの津波が局所的に発生したのか、その原因を追う。

 東北沖で地震動を伴わない海底の動きがあり、津波が増幅していた可能性が浮かび上がってきた。こうした現象は、地震動から津波高を予測する従来のシステムでは予測困難なことが分かってきただけでなく、最新の研究では、東京湾や大阪湾などでも発生する恐れがあるという。今回発掘した映像をひもとき、新たなリスクにどう備えるべきかを考える。

 このほかNスペでは「40人の死は問いかける~大槌町“役場被災”9年目の真実~」(8日午後9時)、「震災9年“変貌”する街で何が~復興ハイウェイで変わる被災地~」(11日午後8時)、「“奇跡”の子と呼ばれて~釜石 小中学生の震災9年~」(14日午後9時)を放送する。

 政府主催の追悼式が予定される11日には、生放送番組「ごごナマ」や、Eテレ「ハートネットTV」でも震災について取り上げ、新たな一歩を踏み出そうとする被災者や、被災地の現在の表情を伝える。

■メディア超え連携

 東日本大震災以降も各地で大規模な自然災害が多発していることを背景に、人々の防災意識は高まっている。関心の高まりは、メディアの情報発信のあり方にも向けられる。

 NHKとフジテレビ、IT大手のヤフーは、災害時に犠牲者をひとりでも減らすためにはどうしたらよいのか、またメディアの連携によってできることを検討し、3者で共同企画を実施する。8日午後2時からNHKで放送する特番「“死者ゼロ”を目指せ~デジタル新時代の情報発信とは~」では、NHKの井上あさひアナとフジテレビの伊藤利尋アナがタッグを組み、デジタル時代に目指すべき災害報道や情報発信のあり方を徹底討論する。

 一方、フジテレビでは、未曽有の被害を教訓とするためこれまでに20本放送してきた検証VTR番組「わ・す・れ・な・い」シリーズとして、「死者をゼロにする情報とは」を11日午後3時50分(関東ローカル)から放送する。

 岩手県釜石市と宮城県山元町を取り上げ、9年前のあの日、どのように災害情報が伝わり、人々の避難行動に結びついたのか、当時のNHKの放送映像やフジテレビの報道映像、ヤフーの検索データなどを交えて検証する。

 ヤフーの特設ページは、ビッグデータを基に当時の被災地のニーズを分析。データの観点から、災害時に必要とされる情報やその発信のあり方を探る。

 このほかの民放各局もさまざまな震災関連番組を放送予定だ。日本テレビは宮城、岩手、福島の系列3局の共同制作によるNNNドキュメント「東日本大震災9年 約束~それぞれの道~」を8日深夜に放送する。

 また、TBSは11日午後の情報番組「Nスタ」で、震災の教訓や都市型災害の恐怖と対策、東京電力福島第1原子力発電所事故で被災した人々の思いなどを伝える。