吉岡秀隆、出演は「運命だった。演じないといけないという思いに」…Fukushima50連載〈2〉

引用元:スポーツ報知
吉岡秀隆、出演は「運命だった。演じないといけないという思いに」…Fukushima50連載〈2〉

 2011年3月の震災発生当時、吉岡秀隆(49)は東京・世田谷で映画「ALWAYS 三丁目の夕日,64」を撮影していた。撮影中はさまざまな葛藤が渦巻き「映画を作っていていいのか、作り上げたところで喜んで見てくれる方がいるんだろうか。そう思うと、つらかった。福島に必死で闘っている人がいる。『頑張ってください』と祈りました」。スタジオから北の空に向かって手を合わせるしかなかった。

 今回の出演依頼が来た際は、製作側の話を聞き、あの時の思いから出演を決めた。「運命だと思いました。祈った時のことを思い出しました。原作を読んで、福島で闘っていた人たちがいると知って。役者の心意気じゃないですけど、演じないといけないという思いになりました。本当に不思議な縁です」

 吉岡が演じる福島第1原発5・6号機当直長の前田拓実は、圧力を下げるため、汚染された原子炉建屋内に決死の覚悟で乗り込んでいく。「エンジニアで、原発に携わることで成長した男。原発を救うことが、家族や故郷の救済につながるので、決死の思いで闘った、素晴らしい男です」と尊敬のまなざしを向ける。

 撮影は過酷を極めた。防護服の着用、20キロの酸素ボンベを背負い、真っ暗闇の中を疾走した。初めて完成した映画を見た時、思いが込み上げ、開始10分は直視できなかった。「撮影も大変で、いろいろ思い出した。実際に3月11日の警報音や津波の映像を見たら、たまらない気持ちになって。映画の試写室を出て、心をリセットしてからもう一度試写室に行きました。それくらいリアリティーがあり、震災当時と撮影のことを思い出して、いろいろ重なった。もちろん役の気持ちも入って苦しくなってしまいました」

 今作は福島で実際に闘った人たちに贈りたいという。「踏みとどまってくれた方々に、感謝の気持ちを込めて作った。その方々が喜んでくれたらうれしい」(増田 寛)

 ◆吉岡 秀隆(よしおか・ひでたか)1970年8月12日、埼玉県生まれ。49歳。子役として5歳でデビュー。山田洋次監督の映画「男はつらいよ」に車寅次郎のおいの諏訪満男役でレギュラー出演。フジテレビ系ドラマ「北の国から」の黒板純役も人気を博した。代表作にフジ系ドラマ「Dr.コトー診療所」など。 報知新聞社