「テセウスの船」好調の裏で…上野樹里“主役食い”の懸念

「テセウスの船」好調の裏で…上野樹里“主役食い”の懸念

 竹内涼真(26)が初主演を務める日曜劇場「テセウスの船」(TBS系)が中盤に差し掛かって視聴率を伸ばしている。このドラマは無差別殺人犯として逮捕された父親(鈴木亮平)の事件の真相を、タイムスリップによって無実を知った息子の田村心(竹内)が追い掛ける。

 視聴率上昇の陰の立役者といわれているのが“特別出演”の上野樹里(33)。第1話で妊娠中毒症で死亡した田村心の最愛の妻・由紀(上野)が、タイムスリップによって第4話から週刊誌記者として生まれ変わった。

 上野が演じる由紀は窮地に陥った心を何度となく救ってみせ、視聴者から〈上野がカッコ良すぎ!〉〈爽やか過ぎる!〉と称賛されている。

 もっとも、女優としてクセのある上野を特別出演させることを危惧する向きも少なくなかったという。原作にある“やわらかい笑顔で慈悲深い女性”が、果たして上野のイメージとそぐうのかという点がひとつ。さらに“演出家泣かせ”として知られる上野を制作スタッフがうまくコントロールできるのかということも懸念されていた。

 そんな不安をよそに番組プロデューサーは「竹内さんの代表作品といわれるようなドラマを作りたい。手を貸してもらえませんか?」と上野を口説いて出演にこぎつけたという。

■NGなしの一発勝負を要求

 今のところ、竹内の最愛の妻役を見事に演じ切っている上野だが、「いつ“劇薬”に転じるか分からない」――。昨年末、制作陣のそんな心配を象徴するような出来事があった。事件の真相究明のために竹内と記者役の上野が被害者の集会に乗り込むシーンの撮影が行われたのだが、上野は「ここはもう少し揉み合う感じにした方がいいですよね?」と演出家にアドバイスしたという。頭を悩ませていた演出家は思わずうなずき、その横では役作りに窮した竹内が頭を抱えていたという。“特別出演”とは主役クラスの大物が主役以外で出演する場合に使用する名称だが、これではどちらが本当の主役か分からない。

 続くシーンの撮影でもアドバンテージを握ったのは上野だった。被害者から顔面にコップで水をかけられるカットの撮影だったが、ADに「メークや衣装を濡らしたくないからね!」と、暗に“NGなしの一発勝負”を要求。現場の緊張感は一気に高まり、スタッフらはコップの水が飛ぶ角度、洋服の汚れ方をめぐって何度となくリハーサルを繰り返し、そして本番……。

 被害者役の俳優がコップの水を上野にかけると、重苦しい空気が走る――。演出家の「はい! OKです!」の声とほぼ同時に、上野は「やった~!」と両手でガッツポーズ。「ありがとうございました!」と言うと、さっさと控室に消えてしまったという。会場に集まったエキストラは、しばらくの間あっけにとられていたそうだ。

 このドラマでは上野の“ショートボブ”が可愛いと、同性の視聴者からも評判だが、この髪形も上野が考案したと聞く。

 上野にイニシアチブを奪われた「テセウスの船」は、最後はどんな港にたどり着くのだろうか。

(芸能ジャーナリスト・芋澤貞雄)