元デューク・エイセスの吉田一彦さん死去 「いい湯だな」などで美声

 「いい湯だな」などのヒット曲で知られる男性4人組コーラスグループ、デューク・エイセスのセカンドテナーだった吉田一彦(よしだ・かずひこ)さんが9日午前9時18分、肺炎のため東京・渋谷区の病院で死去したことが20日、分かった。84歳だった。葬儀・告別式は近親者で行った。甘い歌声でファンを魅了してきたが、約6年前に脳梗塞を患い、その後、引退していた。

 「カイチョー」の愛称で親しまれた吉田さんが、静かに旅立った。

 2014年5月頃に脳梗塞を患い、同10月から活動を休止。復帰を目指して治療を続けていたが、本人と家族の申し出によって15年3月に引退。その後は療養していた。

 1955年結成のデューク・エイセスには57年から参加。黒人霊歌やジャズなどで美声を披露した。60年代には永六輔さん作詞、いずみたくさん作曲でご当地ソングを歌う「にほんのうた」シリーズに取り組み、「いい湯だな」「女ひとり」などがヒット。グループのレパートリーは1600曲を超え、NHK紅白歌合戦に10回出場。2005年には文化庁芸術祭賞優秀賞を受賞した。

 吉田さんは人当たりが柔らかく優しい性格で、豊かな感性の持ち主。ときに活火山的に男気を見せる熱血漢でもあり、グループの美しいハーモニーを支えてきた。

 15年3月にテレビ朝日系「徹子の部屋」で吉田さんの引退を発表したバリトンのリーダー、谷道夫(85)は、当時番組内で病状を説明したうえで「ひたすら復帰を願っていたんですが、それもかなわなかった」と吐露。コーラスの一員としてステージに立つのは困難と引退を決断した故人の苦しい胸中が明かされたほか、吉田さんの妻から寄せられた「これから先も主人の心はデュークという名のもとにあり続けると思います」というコメントも発表された。

 グループは17年12月に解散。結成から62年で幕を閉じ、谷は「ヨレヨレになる前に、歌で感動を与えられるうちに潔くお別れしたかった」と語っていた。