松尾スズキ、読売文学賞贈賞式で「これでのびのびとシリアスなものが書けます」

松尾スズキ、読売文学賞贈賞式で「これでのびのびとシリアスなものが書けます」

第71回読売文学賞の贈賞式が本日2月17日に東京・帝国ホテルで行われ、戯曲「命、ギガ長ス」で戯曲・シナリオ賞を受賞した松尾スズキらが出席した。

【写真】第71回読売文学賞贈賞式より。左から島田雅彦、松尾スズキ、津野海太郎、礒崎純一、川野里子、千葉文夫。(メディアギャラリー他11件)

「命、ギガ長ス」は、認知症の母とアルコール中毒の息子、ドキュメンタリー作家とゼミの教授の関係を描いた二人芝居。松尾の新劇団・東京成人演劇部により昨年上演され、松尾と安藤玉恵が出演した。贈賞式の受賞者挨拶で、松尾はまず「読売文学賞は、受賞の仕方がいいんですね。ある日突然電話がかかってきて、『読売文学賞ですけど、受賞しますか?』と聞かれて、それに『はい』と答えると、受賞したことになる(笑)。僕は3回ほど芥川賞にノミネートされたことがあるのですが、ノミネートはつらいですよ。名前を挙げられてから2カ月くらいの間、ずっと神輿に乗せられたような気持ちにさせられて、発表当日にどーんと……島田さん、あれなんとかしてください!(笑)」と、今回小説賞を受賞した、芥川賞の選考委員を務める島田雅彦に冗談交じりに訴え、周囲の笑いを誘った。

続けて、松尾は自身の作風を「ギャグが多いから賞とは縁遠い」と話しつつ、「知人の編集者が『松尾さんはギャグを抜けば賞獲れますよ』と言ってくれたんですが、賞を獲るためにシリアスなものを書いて、日和ったと思われるのがいやで。でも今回、『命、ギガ長ス』という、かなりギャグの多い内容の作品で賞をいただくことができた。これで、のびのびとシリアスなものを書くことができます!(笑)」と笑顔を見せる。

最後に松尾は「この賞は会場にも来ている安藤玉恵という女優、そしてスタッフのみんなと獲れたものだと思っています。皆さん、ちょっと彼らに拍手をいただけますか?」と会場に呼びかけ、場内は温かい拍手で包まれた。松尾はそれに感謝の言葉を述べつつ、「だからといって賞金は山分けしないんですけどね(笑)。本当に、ありがとうございました」と挨拶を締めくくった。

小説、戯曲・シナリオ、随筆・紀行、評論・伝記、詩歌俳句、研究・翻訳の全6部門からなる読売文学賞は、戦後の文芸復興の一助とするため、1949年度に創設された総合文学賞。71回目となる今回は、戯曲・シナリオ賞に松尾の「命、ギガ長ス」、小説賞に島田の「君が異端だった頃」のほか、随筆・紀行賞に津野海太郎「最後の読書」、評論・伝記賞に礒崎純一「龍彦親王航海記 澁澤龍彦伝」、詩歌俳句賞に川野里子「歓待」、研究・翻訳賞に千葉文夫「ミシェル・レリスの肖像」が輝いた。

■ 第71回読売文学賞
□ 小説
島田雅彦「君が異端だった頃」(集英社)

□ 戯曲・シナリオ
松尾スズキ「命、ギガ長ス」(白水社)

□ 随筆・紀行
津野海太郎「最後の読書」(新潮社)

□ 評論・伝記
礒崎純一「龍彦親王航海記 澁澤龍彦伝」(白水社)

□ 詩歌俳句
川野里子歌集「歓待」(砂子屋書房)

□ 研究・翻訳
千葉文夫「ミシェル・レリスの肖像」(みすず書房)