韓国映画「パラサイト」外国語映画で史上初オスカー…アカデミー賞授賞式

引用元:スポーツ報知
韓国映画「パラサイト」外国語映画で史上初オスカー…アカデミー賞授賞式

 第92回アカデミー賞の授賞式が9日(日本時間10日)、米ロサンゼルスのドルビー・シアターで行われ、韓国映画「パラサイト 半地下の家族」(ポン・ジュノ監督)が外国語映画で史上初の作品賞を獲得した。同作は監督賞、脚本賞、国際長編映画賞と合わせて最多4部門を受賞する歴史的快挙を達成した。また「アナと雪の女王2」で日本語版声優を務めた女優の松たか子(42)は、各国の声優たちと主題歌「イントゥ・ジ・アンノウン」を歌唱。日本人で初めて同授賞式で歌声を披露した。

 歴史を変える偉業を達成したポン・ジュノ監督(50)は、高々とオスカー像を掲げ、喜びを爆発させた。全編が韓国語。これまでは2012年にフランスなどの合作「アーティスト」が作品賞を獲得したが、サイレント映画。外国語映画が受賞するのは初めてだ。ハリウッドのスター俳優や巨匠たちも祝福の拍手を送り、場内はスタンディングオベーションに包まれた。

 「最高です。信じられません。非常に光栄です。朝、目を覚ましたら全部夢だったんじゃないかって思えるぐらい、現実味がないです」と興奮気味にスピーチ。昨年6月、カンヌ国際映画祭で最高賞「パルムドール」を受賞した。アカデミーとのダブル受賞は米映画「マーティ」(デルバート・マン監督)が1956年に受賞して以来、実に64年ぶり。映画界で権威のある2冠を独占した。

 韓国の厳しい格差社会を、ユーモアを交えながらスリリングに描いたポン・ジュノ監督は感慨深げに語った。「小さい時、いつも片隅に置いていた言葉があります。『最も個人的なことは最もクリエイティブなこと』。それは偉大なるマーティン・スコセッシの言葉です。私の名前が米国で知られていなかった時、いつも私の作品を候補に入れてくれたクエンティン・タランティーノ。本当に愛しています」。心の支えとなった2人の巨匠に感謝した。

 作品賞に加えて、監督賞、脚本賞、さらに今回から名称が変わった国際長編映画賞(旧外国語映画賞)も受賞した。オリジナル脚本で韓国に初のオスカーをもたらしたポン・ジュノ監督は「すでに人々は字幕という障壁を越えてきている。今後は外国語映画が作品賞を受賞することが大したことじゃないようになったらいいと思う」。4度目のタッグとなる盟友の主演俳優ソン・ガンホ(53)らと抱き合い、「この後、たっぷり朝まで飲もうと思います」と喜びを分かち合った。

 日本国内でも1月10日に公開され、興収15億円を突破。今月下旬にポン・ジュノ監督、ソン・ガンホの来日が決まっており、日本にもパラサイト旋風が吹き荒れそうだ。

 ◆「パラサイト 半地下の家族」 半地下住宅で暮らす貧しいキム一家の長男で、受験に失敗し続けているギウは、エリート大学生の友達に家庭教師の仕事を紹介される。身分を偽り訪れた先はパク一家が暮らす高台の大豪邸だった。高給の就職先を見つけたギウは、続けて美術家庭教師として妹・ギジョンを紹介。徐々にパラサイト(寄生)していく―。韓国メディアによると約50か国で公開され、興収は世界で1億6000万ドル(約175億円)を突破している。

 ◆ポン・ジュノ 1969年9月14日、韓国・大邱広域市生まれ。50歳。延世大社会学科卒業後、韓国映画アカデミーで映画制作を学ぶ。脚本も手掛けた2000年公開の「ほえる犬は噛まない」で長編監督デビュー。2作目の「殺人の追憶」(03年)で注目され、「グエムル―漢江の怪物―」(06年)は当時の韓国動員歴代1位の大ヒットに。「母なる証明」(09年)で国内外で20以上の映画賞を受賞。 報知新聞社