「恋愛結婚は珍しいはず」『名もなき生涯』ヴァレリー・パフナー、ヒトラーを拒んだ夫妻を語る

引用元:cinemacafe.net
「恋愛結婚は珍しいはず」『名もなき生涯』ヴァレリー・パフナー、ヒトラーを拒んだ夫妻を語る

『シン・レッド・ライン』『ツリー・オブ・ライフ』などの巨匠テレンス・マリック監督最新作となるサーチライト・ピクチャーズ作品『名もなき生涯』。この度、ヒトラーへの忠誠を拒絶し、自らの信念を貫いた主人公フランツの妻役を務めたオーストリア出身の女優ヴァレリー・パフナーのロングインタビュー映像が、シネマカフェに到着した。

【画像】ヒトラーへの忠誠を拒絶した夫フランツを支えた

ヴァレリー・パフナーといえば、『エゴン・シーレ 死と乙女』(’17)ではプレイボーイで非情、野心的な画家エゴン・シーレの美のミューズを演じたことで知られ、名作「死と乙女」のモデルとなった女性を体当たりで熱演し、オーストリア映画賞で最優秀女優賞を受賞した。

そんなヴァレリーは本作『名もなき生涯』で、第二次世界大戦時のオーストリアに実在した、ヒトラーへの忠誠を拒絶し自らの信念に殉じた農夫フランツ(アウグスト・ディール)の妻、ファニことフランチスカ・シュワニンガーを演じた。

山と谷に囲まれた美しい村で農夫として働くフランツのもとにも、やがて召集令状が届くが、彼はヒトラーへの忠誠を誓う署名を頑なに拒み、直ちに収監されてしまうのだ。

ヴァレリーは役に惹かれた経緯について、「脚本よりも前に“手紙”が送られてきて、読んでみたら最初の3分の1で涙が出てきました。それから最後まで泣きどおしでした」と語る。“手紙”とは、フランツが収監されている時にファニと交わした実際の書簡のことで、英訳版として出版されているもの。「彼らは最後まで本当に通じ合っていたし、互いに力を与え合っていたんです。ただの農民なのに、あんなにも強い。知識人でもなんでもなくても、心に強い気持ちを持っている。とても感動的な話だと思いました」と明かす。

実際のフランチスカが94歳くらいの時のインタビューを見たことがあるそうで、「近所の人が2人のことを語るシーンもあって『本当に愛し合っていた』と言っていました。『愛し合っているのが見て分かる』と。当時の農民にとって、恋愛結婚は珍しいはずです。でも2人はしたんです」。

そんな彼女の役作りについて、独特な手法で撮影をすることで知られる監督テレンス・マリックに対し、「テレンスは常に本物の瞬間を追い求めています。だからこそ、出演する女優としては何かをしようとしては絶対にいけない。その瞬間を生きなきゃいけない。それがとても難しい時もあります。ただそこにいて吐き出すしかないのです」とふり返る。時に1テイク28分もの長回しで、即興や想像力が尽きるまで演じることを求められたというが、その撮影法を通じて「キャラクターには幾つもの層があって、1つに絞れるものじゃないことを学びました」とも語った。

神の存在すら身近に感じさせる、あまりにも美しい光と風景のなか、愛に満ちた胸を震わす書簡を紐解きながら、人間の真実と尊厳に迫る本作。ひたむきな瞳でナチスに立ち向かった男の妻を、「監督を信頼しているから、安心して手を離せます」と監督に全面的な信頼を寄せながら、スクリーンの中で生きたヴァレリーの姿に注目してみてほしい。

『名もなき生涯』は2月21日(金)より全国にて公開。