仲代達矢が絶賛する想田和弘監督作「精神0」 ベルリン国際映画祭フォーラム部門選出

引用元:映画.com
仲代達矢が絶賛する想田和弘監督作「精神0」 ベルリン国際映画祭フォーラム部門選出

 [映画.com ニュース] 想田和弘監督の最新作「精神0」が、第70回ベルリン国際映画祭のフォーラム部門に選出されたことがわかった。日本では、5月上旬の劇場公開が決定。精神医療に人生を捧げた82歳の医師の引退、そして妻と過ごす“その後”に迫る。

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 自ら「観察映画」と呼ぶ、台本を作らずにカメラを回し、ナレーションやBGMなどを排したドキュメンタリーの方法を提唱、実践してきた想田監督。「選挙」「港町」などを手掛け、世界の映画祭で注目を浴びてきた。観察映画第9弾となる「精神0」では、精神科診療所の患者たちをとらえた「精神」で出会った山本昌知医師にスポットを当てる。突然の引退宣言に戸惑う患者たちの様子や妻・芳子さんとの生活を、深い慈しみと尊敬の念をもって描き出した。ベルリン国際映画祭に加え、米ニューヨーク近代美術館(MoMA)が主催するノンフィクション映画の祭典「Doc Fortnight2020」のセンターピース(目玉作品)にも選ばれている。

 作品を鑑賞した俳優の仲代達矢は、「素晴らしいドキュメンタリーでした。愛おしく、やさしい気持ちになり、最後は泣きました」と印象を明かす。「『精神』からだいぶ時が流れたことも思い知らされ、人間は年をとるもんだし、人間はやっぱり穏やかでいることが何よりだ、と。資本主義に埋もれた感性に、少しでもこの慈しみが沁みれば良いなあ」とエールをおくった。

 想田監督は、「精神」撮影時に患者たちから神か仏のように慕われ、絶大な信頼を得ている山本医師に興味を持ったことが、本作のスタートだったと語る。「山本医師のすごさを『発見』したのは、『精神』の編集を進める過程においてである。診察の様子を繰り返し観察していると、彼が発する一つひとつの言葉や仕草に、治療的な戦略が隠されていることがわかる。そして彼のあらゆる行動が、静かで豊かな慈愛の情によって基礎づけられていることに気づかされる。僕はいつかこの類まれなる医師を主人公にしたドキュメンタリーを撮りたいものだと、漠然と考え始めた」と述懐する。

 そして想田監督は2018年に山本医師の引退を知り、撮影を決意。「山本氏が、医師という地位や看板、役割や生きがいから離れ、一人の『人間』になったときに、どう生きていくのか。同じく仕事中毒の僕には、その点が興味津々だった」と心情を吐露。さらに、撮影を進めていくうちにもう一人の主人公・芳子さんの存在が浮かび上がってきたといい、「この映画は、山本昌知個人というよりも、夫婦についての作品になっていった。その結果、本作は期せずして『純愛』についての映画になったのではないかと思っている」とコメントを寄せた。

 「精神0」は、5月上旬から東京・渋谷のシアター・イメージフォーラムほか全国で順次公開。