美川憲一&男装女子ザ・ヴァイパーが多様性語る「すべては自分次第」

美川憲一&男装女子ザ・ヴァイパーが多様性語る「すべては自分次第」

 昨年大晦日の「NHK紅白歌合戦」はLGBTQの象徴であるレインボーの旗を振り、紅組(女性)対白組(男性)という枠組みを飛び越えて多様化路線に大きくかじを切った。そんな時代の変遷を自ら体現してきたジェンダーレスのレジェンド・美川憲一(73)と男装女子のボーカルグループ、ザ・ヴァイパーが多様性について語った。

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■「衣装で注意されるのはジュリーとアタシだけ」

美川 今はいい時代になったわね。私が紅白に「釧路の夜」で初出場した時(68年)は“衣装が派手すぎる”って怒られたのよ。それが今じゃ「おっさんずラブ」がヒットするなんて訳わかんない(笑い)。夫婦一緒に見てるってどういうことかしら。

ICHIRU 美川さんが初出場した頃は厳しかったんですか?

美川 スパンコールの柄の入ったタキシードと渦の大きな柄の着流しでリハーサルに出たら、局の人に注意されて。衣装で注意されるのはジュリー(沢田研二)とアタシだけ。男は中性的にならないように地味な方へ地味な方へと誘導するんです。でも衣装は変えなかったわ。

YUYA 美川さんが頑張ってくれたから、今華やかになったのかもしれませんね。

美川 歌詞も厳しくて「おんなの朝」は売れたのに歌えなかったんです。歌詞中の「ゆうべあんなに燃えながら」の1カ所が原因で。

JIN そんなに? じゃ「さそり座の女」の頃は少しは緩くなったんですね。昔はジェンダーレスなんて今以上に理解されないですよね?

美川 当時は“僕”って言ってたのよ。今はオネエ言葉が商売になるって気がついてから“アタシ”になったけど(笑い)。

ICHIRU ジェンダーで不都合はありましたか?

美川 面倒なことはないわね。子供の頃から男より男らしいから女の子にモテたのよ、初めて童貞を失ったのも年上の女性でしたし。奇麗な人でしたよ。アタシ、可愛かったから(笑い)。高校は男子校で修学旅行の時はたくさん誘われたしね。

YUYA 男女両方にモテたんですね。

美川 タクシーに乗ったら、外苑の薄暗い所に連れていかれたこともあったわ。「お代を倍払いますからお帰りください」って交渉したり大変だったこともあったわ。そうそう“オカマ”は決していい言葉じゃないのよ。

HARUTSUKI え? そうなんですか?

美川 カマを掘るっていう言い回しから来ていて、男娼のことなの。それで昔、道で“オカマ!”って言われて「アタシはオカマで商売してないんだよ!」って土下座させたこともあったわ。

HARUTSUKI 今は性別欄が、男・女・その他みたいな選択も多くなりましたね。

美川 女装が好きだけど、恋愛対象は女性っていう男性もいるし……今の時代メチャメチャね。LGBTQのQって?

YUYA クエスチョンです。

美川 わざわざカミングアウトする必要もないわね。あなたたちはカミングアウトしてるの?

YUYA いいえ。こんな格好だからなんとなくそうだろうと思われてますけど……。

美川 カミングアウトしなくていいんじゃない?今は。みんなクエスチョンで。

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