風前の灯がヒットコンテンツに 『あ、安部礼司』に見る“ラジオドラマ”の可能性

引用元:オリコン
風前の灯がヒットコンテンツに 『あ、安部礼司』に見る“ラジオドラマ”の可能性

 コストがかかる、時代に合わない、技能のあるベテランスタッフの減少といった理由からメディアから姿を消していく作品は多い。「ラジオドラマ」もその一つ。テレビがない時代に多くのラジオドラマが生み出されたが、テレビなどの映像メディア、インターネットの発達による動画コンテンツの台頭などもあり、風前の灯となっていた。そんななか、長年にわたり放送し続けている人気コンテンツが『NISSAN あ、安部礼司 ~ BEYOND THE AVERAGE ~』である。ラジオドラマのなかでもオリジナルストーリーにこだわり、従来のラジオドラマと一線を画したつくりが多くのファンを呼び、約14年間にわたり人気を保っている。番組スタート時、いわゆる有名人を起用した番組でないにもかかわらず、架空のサラリーマン「安部礼司」が主役のラジオドラマがなぜ人気を集める事ができたのか。企画立ち上げから2年間、さらに2018年から番組を担当する高橋智彦プロデューサーに話を聞いた。

【写真】“生”ならではの緊張感…『安部礼司』イベントで元乃木坂・橋本奈々未が熱演! 風前の灯がヒットコンテンツに 『あ、安部礼司』に見る“ラジオドラマ”の可能性 TOKYO FM 編成制作局 制作部 プロデューサー 高橋智彦氏 (C)oricon ME inc.

憂鬱になりがちな日曜夕方5時に聴きたくなる番組を想定

 ラジオドラマとは、文字通りラジオで放送される声のみのドラマのこと。日本では1925年3月のラジオ放送開始直後から、さまざまなラジオドラマが作られ、みるみるうちに世間に浸透していき『炭坑の中』(NHK)などヒット作が生まれた。 
 だが、1939年にテレビ放送が実験的に始まり、その後映像として視覚でも楽しまれるテレビが一気に家庭に普及すると「ドラマ」もテレビへ移行。ラジオドラマの数は徐々に減っていった。そんな「逆風」どころか、”風前の灯”の中で立ち上がったのが、『NISSAN あ、安部礼司 ~BEYOND THE AVERAGE~』だ。

 番組開始は2006年4月。当時、ラジオ全体で絶滅寸前だったラジオドラマを復活させ、ごくごく普通のサラリーマン「安部礼司」を主役に据えた番組が始まった。英語の「平均的な」を意味する「average=アベレージ」をもじった名前からして、その内容も軽いタッチのコメディスタイル。安部礼司がトレンドの荒波に揉まれる姿と、それでも前向きに生きる姿が描かれる話に思わずクスッとなる。憂鬱になりがちな日曜夕方5時に聴きたくなる番組を想定して作られた。