ザ・フーが挫折しながら創り上げた名盤『フーズ・ネクスト』

引用元:OKMusic
ザ・フーが挫折しながら創り上げた名盤『フーズ・ネクスト』

OKMusicで好評連載中の『これだけはおさえたい洋楽名盤列伝!』のアーカイブス。ザ・フーが挫
今回は永遠に聴き継がれるべき名盤、ザ・フーの『フーズ・ネクスト』を取り上げたい。1971年に発表された本作の2年前、彼らはロックにオペラを導入した『トミー』(’69)という作品で、全世界にその名を知らしめた。メンバーのピート・タウンゼンドのアイデアによるロックオペラへの試みは世界中で大きな成功を収め、ブリティッシュロック界の頂点を極めたのだが、誰も成し遂げたことのない初のジャンルであったため、アルバム制作は困難を極めている。しかし、この作品での苦労がグループの音楽的成長を促したことは確実で、『トミー』から2年後、流行とは無縁のロック史に残る本作を生み出すことができたのである。
※本稿は2015年に掲載

日本ではあまり人気が出なかった

僕が中学低学年の頃、各種音楽雑誌で『トミー』の記事がよく出ていたことは、今でもよく覚えているのだが、自分も含め周りのロック好きの友達が、このアルバムを買っているのは見たことがない。それはなぜかと言うと、当時『トミー』は2枚組で値段が高かったことがひとつ。もうひとつは、当時の日本のロック少年は、やっぱりギタープレーヤーが大好きで、どうしてもクラプトンやジェフ・ベック、ジミー・ペイジらのような“リード・ギタリスト”に夢中であったことが挙げられると思う。

ザ・フーのピート・タウンゼンドは、カッコ良いギターソロを弾きまくるタイプではなく、コードプレイや印象的なリフが巧い、どちらかと言えば渋めのギタリストなので、子供にはまだその魅力がよく分からなかった。もちろん、彼はフィードバック奏法やハウリング奏法を生み出しているし、何よりステージでギターを放り投げたり壊したりする怖い人(笑)であることは知っていたのだが、彼が知的で渋いパフォーマーだということを理解したのは、もう少し大人になってからのことであった。