韓国映画「パラサイト」は米アカデミー賞の歴史を塗り替えられるか

韓国映画「パラサイト」は米アカデミー賞の歴史を塗り替えられるか

 米アカデミー賞の歴史を塗り替えられるか。

 2019年5月にカンヌ国際映画祭で韓国映画初となるパルムドールを受賞した「パラサイト 半地下の家族」。映画「殺人の追憶」や「母なる証明」などを手掛け、“韓国の鬼才”と称されるポン・ジュノ監督(50)の最新作だ。

 日本では1月10日に封切られ、公開3週目となる25、26日の全国映画動員ランキング(興行通信社調べ)では先週5位から4位にアップ。じわじわと人気が広がっている。

 同作の受賞歴はカンヌだけではない。今年1月6日に発表されたゴールデングローブ賞では外国語映画賞を、19日に米ロサンゼルスで開かれた第26回米国映画俳優組合賞では「作品賞」に当たるキャスト賞を受賞している。

 さらに今年のアカデミー賞では作品賞、監督賞、脚本賞、美術賞、編集賞、国際長編映画賞の計6部門にノミネート。アメリカが製作に関わっていないアジア映画が作品賞にノミネートされるのは史上初という快挙である。

 韓国では19年5月に公開がスタートしており、観客動員数は1000万人を突破。

「あらかじめネットで予約して19日の日曜日に見に行ったんですが、早い段階で満席となっている回もありました。満員の劇場内を見渡したところ、年代層が幅広く、男女も半々ぐらい。上映終了後、ロビーを歩きながら興奮した様子で感想を言い合う人たちが、いつもより多かった印象ですね」(芸能ライター)

「パラサイト」はなぜ、こんなにも多くの人々の心をつかんでいるのか。

「希望が見いだせない貧困層のあえぎ、叫びといったテーマが、各国の映画として顕著に据えられるようになっていますが、『パラサイト』は面白さという面で群を抜いています」と話すのは、映画「武士の家計簿」「二宮金次郎」などの脚本を執筆している脚本家の柏田道夫氏だ。こう続ける。

「貧困の象徴である半地下の家に住む兄と妹が、豪邸のセレブ家族に巧みに入り込んで……という序盤から、一気に観客の予想を次々とひっくり返す二転三転の展開へ。ハラハラドキドキのサスペンスでありながら、ブラックな笑いが恐怖へと転換した先に、もうひとつの“家族愛”という感動テーマまで伝える。実に練り込まれた脚本と、ポン・ジュノ監督の“してやったり感”が満載。これらのすべてに、観客は引き込まれているのでしょう」

 気になるアカデミー賞の行方だが、発表は日本時間で2月10日。ずばり、この作品が受賞するかどうかを、柏田道夫氏に尋ねてみた。

「韓国映画の底力で、アカデミー賞の作品賞、監督賞、脚本賞の本命に躍り出たと思いますし、この際、受賞して映画の歴史を変えてほしい。予定調和で新味に欠ける原作物しか映画化できなくなった邦画界の関係者たちは、爪のアカを煎じて、と自戒を込めて思います」

 注目だ。