「フクシマ後世に伝えよう」佐藤浩市と渡辺謙が目を真っ赤にして訴え「痛み伴いながら見て」

引用元:中日スポーツ
「フクシマ後世に伝えよう」佐藤浩市と渡辺謙が目を真っ赤にして訴え「痛み伴いながら見て」

 俳優の佐藤浩市(59)、渡辺謙(60)、若松節朗監督(70)が23日、福島県郡山市で映画「Fukushima50」(3月6日公開)の特別試写会の舞台あいさつに出席した。同映画は2011年東日本大震災での福島第一原子力発電所事故で戦い続けた作業員らを描いた作品で、この日が世界最速上映となった。3人はインタビューにも応じ、主演の佐藤は「後世に伝えるため。痛みを伴いながらも見てほしい」と切に願った。 

 上映前の舞台あいさつ。それでも、館内ではすすり泣く音が悲しく響いた。月日を重ねても記憶の傷は癒えていない。東日本大震災から約9年―。避難指示区域が残る富岡町を訪れた主演の佐藤も涙を浮かべた。充血した目は福島県民で埋まった客席をまっすぐ見つめ、そして呼び掛けた。

 「(復興は)本当に始まっているのか。みんな現状をどれだけ知っているのか。それをもう1回、感じてもらいたい。もう一回、各都道府県の方に感じてもらいたい。負の遺産を少しだけ形を変えた遺産にしましょう」

 忘れてはいけない場所、出来事。「フクシマ」からスタートした。同映画は、門田隆将さんのノンフィクション「死の淵を見た男 吉田昌郎と福島第一原発」が原作。海外メディアから「Fukushima50」と呼ばれ、空前絶後の危機に立ち向かった作業員を描いた。佐藤と渡辺。2人は言う。

 佐藤「どう受け止められるか怖さもある。苦しい場面もあると思います。ただ、後世に伝えるために痛みを伴いながらも見てほしい」

 渡辺「ここ(福島)で起こったこと。ここから発信していく大事な日になる」

 映画での共演は「許されざる者」(2013年公開)以来。佐藤は最前線となる福島第一原発1・2号機当直長の伊崎利夫、渡辺は司令塔となる福島第一原発所長の吉田昌郎を演じている。5日間の壮絶な戦い。2人は赤電話1本でつながり、事故に対処していく。渡辺は「不思議な感覚があった。見えない所でつながる連帯感があった」と振り返った。若松監督も「この2人がいなかったらできなかった」とうなった。

 ラストでは富岡町の美しい桜並木が映される。渡辺は言葉に熱を込めて言った。「福島にはこんなすてきな、海も山も里もある。もっと誇りを持って自分は福島の出なんだよって言える。そういう場所に戻ってほしい」。2020年。東京五輪もあり、世界から注目を集める年にあえて公開を設定したという。「Fukushima50」。両名優は目を赤くし「未来につなげたい」と言葉をそろえた。