自然とそばにあって欲しいもの、中山美穂 空白の20年――歌への想いとは:インタビュー

引用元:MusicVoice

 デビュー35周年イヤーを迎えた中山美穂が12月4日、約20年ぶりとなるニューアルバム『Neuf Neuf(読み:ヌフ ヌフ)』をリリース。1999年9月にリリースされたアルバム『manifest』、同発のシングル「Adore」から表立った音楽活動はおこなわれず、シンガー中山美穂はもう見れないものかと思われたが、今年の3月にFLYING KIDSの浜崎貴司の誘いを受け、弾き語りライブにゲスト出演。そのライブを観ていた関係者の目に留まり、再び歌手活動のきっかけを掴んだ。フランス語で“新しい”という意味を持つ『Neuf Neuf』は高田漣のプロデュースで、デビュー曲「C」など過去の楽曲から4曲、自身が作詞した「時計草」など新曲合わせ計8曲を収録。今の中山美穂を感じられる作品となった。アルバムの制作背景から、音楽への想いなど話を聞いた。【聞き手=村上順一/撮影=冨田味我】


自然とそばにあって欲しいもの、中山美穂 空白の20年――歌への想いとは:インタビュー


中山美穂(撮影=冨田味我)

ずっとやりたいという気持ちは持ち続けていた

――デビュー35周年については、どう感じていますか。

 ビックリですよね。今こうしてデビュー曲を歌っているということも含めて本当にビックリしています。

――今振り返るとデビュー当時はどんな気持ちでしたか。

 不安もなかったし、やってみないとわからないなと思っていました。デビューしてダメだったら早い段階でやめようと思っていたんです。

――アルバム制作が決まるまでの経緯はどんな感じだったのでしょうか。

 音楽をやっていなかった20年間、ずっとやりたいなという気持ちは持ち続けていました。チャンスがあればライブでもアルバムでも音楽に繋がることならなんでもやりたいなと。待っていてくれる人がいる、ということを知った時に切なくなって、何とかして歌いたいなと思いました。やりたいのになかなか出来ないもどかしさがありました。

 なかなかきっかけもなくて、実現しなかったんです。リリースするとか関係なく、曲を作ったり、ライブをすることも決まってはいなかったんですけど、バンドメンバーを集めてリハをしたりはしていました。

――今年の3月には『GACHI HAL TOUR 2019』に出演されていました。

 昔から親交のあるFLYING KIDSの浜崎貴司さんのライブ『GACHI HAL TOUR 2019』にゲストで出させていただきました。その時に忘れらんねえよの柴田(隆浩)くんに書いてもらった「君のこと」をライブで歌わせていただきました。

 浜崎さんから誘って頂いたんですけど、私出来るのかなって。すごくライブをやりたい、けど無理かもと思いながらも、弾き語りのライブだったので、泣きながら一生懸命ギターを練習しました(笑)。このライブをレコード会社の方が観に来て下さっていて、今回のお話に繋がったので、浜崎さんには本当に感謝しかないです。

――昨年は『2018 FNS歌謡祭』(フジテレビ系)に出演されましたが、その時はどんなお気持ちでしたか。

 出演できたことだけですごく嬉しかったんです。「また歌えるんだ、奇跡みたい」と思っていました。

――さて、アルバムタイトルはなぜこの言葉に?

 なんとなくですけど、『Neuf Neuf』って書いてあったら言ってみたくなりませんか。しかも2回続けて言うと楽しいですよ(笑)。

――確かに言いたくなりますね(笑)。今作は、高田漣さんのプロデュースです。

 高田さんがシティポップみたいな感じでやりたいとお話ししてくれました。私がイメージしていたものも、どこか懐かしさが感じられながらも新しいものをやりたかったんです。そう考えていた時に高田さんのアルバムを聴いて、「これだ!」と思いました。

――制作はどのように進んで行ったのでしょうか。

 ガチガチに決めて作っていったわけではないんです。作りながら流れを作っていきました。セルフカバーについてはどの曲にしようかはみんなですごく考えました。「世界中の誰よりきっと」は、敢えて今回は入れなかったんです。

――歌詞は書き溜めていたものも使用されたのでしょうか。

 歌詞はストックもありましたけど、今回一切それらは使いませんでした。今感じた言葉で書いた曲なんです。例えば「時計草」は詞先なんですけど、深い意味を込めているわけではなくて、読んだ方それぞれが感じてもらいたくて、メッセージ性の強い歌詞は避けたかったんです。音として気楽に楽しめるもの、押し付けがましくないものが良いなと思いました。なので、頭の中はシンプルになっていったのかなと思います。時計草は好きな花で、眺めているだけでもイマジネーションが湧いてくるんです。

――歌詞にメロディがついてどのように感じましたか。

 すごく良い感触でした。「時計草」の歌詞を書いて、高田さんにその詞を送ったら、イメージがすぐに湧いたらしく、すぐに曲をつけていただきました。上がって来た曲を聴いて、もう絶対1曲目にしようと思いました。でも、私としては詞はまだスケッチ段階のものだったので、不安になってしまって「もう一回詞を書き直したい」と高田さんにお話ししたのですが、結局歌詞は書き直さず、最初のままなんです。

 制作中は大変だったんですけど、完成した時の充実感はありました。久しぶりのレコーディングはスタジオの環境も20年前とは違ったので、戸惑いもありました。ブースで歌うというのは孤独じゃないですか。その閉塞感に慣れなきゃいけない、慣れるために意味もなくスタジオにいたり(笑)。とにかく力を抜かなきゃと思っていました。