「やりたいことを優先できる」「おかしい部分は変えていきたい」 働く上での葛藤を描いた2つの漫画に反響

引用元:オリコン
「やりたいことを優先できる」「おかしい部分は変えていきたい」 働く上での葛藤を描いた2つの漫画に反響

 社会に出て働くと、嬉しいことや楽しいこと、そしてときにつらい目に遭うことだってあるもの。そういった社会人になって体験した喜びや苦悩について描いた2つの漫画が話題を呼んでいる。1つ目の作品は、「『大人になるとツライことばかり』って、(気持ちはわかるんだけど)若い人にはなるべく言わないほうがいいと思うって漫画」というコメントとともに投稿された漫画だ。投稿者である漫画家のオキエイコさんは、「昔の自分が欲しかった答えや求めていた言葉を、今の自分が届けられたら」という気持ちで描いたという。

【漫画】「大人になるとツライことばかり」若い人には言わない方がいいと思った話

■「楽しいのは今のうちだけ」と大人が言うのは、若い人に対するマウントでしかない

 「楽しいのは今のうちよ」と大人から言われた、子どもの頃のオキさんの心情が漫画には描かれている。学生時代には窮屈さしか感じていなかったので、“今ですら楽しくないのに…”と「絶望感」すら覚えたという。でも、大人になるに連れてある意味“図太さ”が身についたり、社会人になり働いてお金や自由を手に入れることができたりして、オキさんは「大人って楽しい」と実感することができた。

 「大人は楽しくない」という言葉を若い人たちに植えつけたくないという一心で描いたこの漫画の投稿には、「大人になってからの方が生きるのが楽になった」「わかる、大人って楽しいよね!」など、肯定的な意見が多く集まった。

「やはり若い人からの『今まさに絶望していましたが、大人になったら楽しいことが待っていると思って頑張ります』という言葉は印象深いです。大人が『楽しいのは今のうちだけ』などと言うのは、若い人に対するマウントでしかないなと。咲くかもしれないツボミを、咲く前に摘んでしまうようなことはしたくない。若い人たちに、少しでも希望の光をさせたらという思いでした」

 この漫画を受けて、オキさんのTwitterには「実際にどう変わったのかを教えてほしい」といったコメントも学生さんから寄せられた。オキさんは、その問いに関する自身のアンサーも漫画にしている。実感としては、社会人となって“自分を抑えずに楽しめる環境”を手に入れることができたということが、大きな変化となったという。

「学生時代は自分の努力以前に、生まれたときから持っているカードで戦っている感がありました。生まれた土地、親の経済力など、自分ではどうにもならない部分で勝負している感が否めなかった。対して社会人になると、自分に決定権があるし、給料の使い方も自分で決めることができる。“本当にやりたいこと”を優先できる環境が、そこにはありました」

 当然、大人にんれば学生よりも責任は大きくなるし、リスクも増える。それでも、社会では色々な役割の人が集まって仕事を進めるので、学生のときのように“一律であること”は求められない。もともと持っていたカードに加え、さらに自分で手持ちのカードを増やして戦うこともできる。それが、オキさんが感じた“社会人の自由”だった。

■今後もリアルを発信し続ける 「閉鎖的な広告業界が働きやすい業界になって欲しい」

 2つ目の作品は、「広告代理店で受けたパワハラの話」というタイトルで投稿された漫画だ。先輩から受けたパワハラの話が描かれているが、投稿主の広告女子ぱすたさんは現在も仕事を辞めることなく、「大好きだ」という広告の仕事を続けている。SNSで広告業界のリアルを発信するのには、ある理由があるという。

 新卒として配属後、入社7年目のS先輩の下で仕事をすることになったぱすたさん。23時から打ち合わせを入れられたり、土日祝日も無給で働かされたり、「飲み会も仕事!」と朝の4時まで連れ回されたりする日々を送ることになる。そんな中、S先輩が担当する案件で前払い金の入金漏れが発覚。ところが、「お前が後輩なんだから、お前のミスだろ」と、S先輩は無関係のぱすたさんに責任を転嫁。しかも、S先輩は「本当のことを言ったら役員に根回しして辞めさせる」といった脅しまでかけてきた。

 この件がきっかけとなり、ぱすたさんは心身を崩してしまい、S先輩のチームを外れることに…。「少しでも、S先輩のような人が業界から減ることを祈るばかりです」と、漫画の最後でぱすたさんは訴えている。

「この漫画を描いた目的は、私が経験した広告代理店でのパワハラのリアルを知ってもらい、業界で当たり前になっていることを、「おかしい」「変えなければ」と少しでも多くの人に思ってもらうため。また、この話は広告業界に限った問題ではないと、様々な意見・感想を通して知りました。この漫画を通して、共感したり、自分自身が抱える辛さに気づいたり、また周囲に似たような状況の人がいたら助けようと思ったり、そういった人が少しでも増えて欲しいと思います」

 「良いこと・悪いことも含めて、広告業界のリアルを赤裸々に発信していきたい」と、今後も漫画を描き続ける決意を覗かせるぱすたさん。

「私が最も驚いたのは、『広告業界って、本当にこんな感じなんですね!?』という声。私にとっては当たり前だった広告業界の日常が、他の人にとっては全く当たり前でないと初めて知りました。だからこそ、私の漫画を通して、広告業界がどんな業界なのかを、業界外の人にも知ってもらいたい。それによって、閉鎖的な広告業界が少しでも外の意見を取り入れ、今よりも社会に向けて開かれ、多くの人にとって働きやすい業界になって欲しいと思っています」