LIZARDの『LIZARD』は古い殻をぶち壊した意欲作

引用元:OKMusic
LIZARDの『LIZARD』は古い殻をぶち壊した意欲作

OKMusicで好評連載中の『これだけはおさえたい邦楽名盤列伝!』のアーカイブス。今回はLIZARDの『LIZARD』を取り上げる。海外でのパンクロックの勃興を受けるかたちで、70年代後半に掲げられたアンダーグラウンドロックの活性化の動き“東京ロッカーズ”。一般的な知名度はそれほど高くないかもしれないが、日本ロック史における重要なキーワードだ。LIZARDはその中心的存在で後の邦楽シーンにも大きな影響を与えたバンドである。
※本稿は2015年に掲載

“東京ロッカーズ”とは何か?

社会を動かすための世の中にある動きを“ムーブメント”と呼ぶ。そこから転じて、あるカルチャーを動かす流れもムーブメントと呼ばれる。今はこちらの使われ方が主流かもしれない。1960年代のヒッピー・ムーブメントがその代表例で、日本では呼称こそないが2000年前後にHi-STANDARDが中心になって企画されたイベント“AIR JAM”周辺がそうであろうし、ラフィン・ノーズ、ウィラード、有頂天の所謂インディーズ御三家の人気によって勃興した80年代前半の “インディーズ・ブーム”もそれに当たるだろう。

そして、忘れてはならないのが“東京ロッカーズ”だ。これは70年代後半、S-KENこと田中唯士が所有する“S-KENスタジオ”を中心として活躍していたバンドの総称で、概ねS-KENを始め、フリクション、ミラーズ、ミスター・カイト、そしてLIZARDの5バンドを指す。彼らは日本のパンク、ニューウェイブの祖であり、引いては日本のロックの祖と言っても差し支えないだろう。「日本のロックの祖は流石に大袈裟では?」と思われる方もいらっしゃるかもしれないが、インディーズ御三家のひとつ、有頂天のデビューライヴのオープニングがLIZARDの「宣戦布告」であったことは知る人ぞ知る話だ。そう考えると、はっぴいえんどやシュガーベイブとはアプローチこそ異なるが、“東京ロッカーズ”も間違いなく日本のロックを次の段階へ推し進めたムーブメントなのである。