MISIAが魅了した「紅白歌合戦」 “レインボーフラッグ”の舞台演出に込めたメッセージとは?

引用元:TOKYO FM+
MISIAが魅了した「紅白歌合戦」 “レインボーフラッグ”の舞台演出に込めたメッセージとは?

高橋みなみがパーソナリティをつとめるTOKYO FMの番組「高橋みなみの『これから、何する?』」。毎週水曜日は、音楽ジャーナリストの高橋芳朗さんとお届け。1月15日(水)の放送では、“西暦2000年”をキーワードに、日米を代表する2人のディーバを取り上げました。

日米ともに女性シンガーの活躍が目立った2000年。そのなかでも躍進したのがMISIAとビヨンセ。2人とも1998年のデビューながら当時から圧倒的な歌唱力を誇り、このころすでに、今に繋がるメッセージを発信していたそう。そこでこの日は、2人がどんな歌を歌い、どんなメッセージを送っていたのか振り返りました。

まずはMISIA。記憶に新しいのは、昨年末の「NHK紅白歌合戦」。彼女は、紅組のトリとして、「アイノカタチメドレー」を披露しましたが、そのステージではLGBTs(性的少数者の総称)を象徴するレインボーフラッグが掲げられ、多くのドラァグクイーン(派手な女装をした男性)が参加するなど「紅白でセクシャリティの多様性を唱えた」と芳朗さん。

さらに、男性と女性が競い合う場所で、こうした画期的な試みがおこなわれたことに「今後の紅白の“大きな転換期”として語り継がれていく気がする」とも。

MISIAはLGBTsのサポートだけでなく、アフリカの子どもたちの支援をはじめ、さまざまな社会活動に取り組んでおり、芳朗さんは「デビュー当時からそういったビジョンを持ち合わせていた印象がある」と言います。というのも、デビューアルバムのタイトルが『Mother Father Brother Sister』。直訳すると「世界は家族、人類は兄弟」で、「人類の融和、統合を意味している」と指摘。さらに、2000年リリースのセカンドアルバムのタイトルは『LOVE IS THE MESSAGE』。「恋愛だけじゃなく、もっと広い愛を歌ってきた」と言います。

しかも、これらには元ネタがあり、『Mother Father Brother Sister』は1970年代にアメリカで結成された、さまざまな人種を擁するソウルバンドMFSB(Mother Father Sister Brother)のこと。彼らも世界平和、差別撤廃を訴え、その代表曲が「LOVE IS THE MESSAGE」なのだとか。

総じて、芳朗さんはMISIAについて、「由緒正しきソウルミュージックの系譜を継いでいこうと感じさせる歌詞、メッセージに説得力を感じさせる歌力がある」と評していました。

一方、アメリカの歌姫ビヨンセは、ヒップホップ・R&BグループのDestiny’s Child(ディスティニーズ・チャイルド)の中心として活躍していましたが、当時のヒップホップの世界は、まだまだ男性優位主義で“女性蔑視”が根強くあった時代。そこで彼女たちは強い女性像を打ち出していたそうです。

そんななか2000年に発表された曲が「Say My Name」。芳朗さんは「タイトルからすると甘いラブソングを連想するかもしれないが、実は浮気撃退ソング」と説明します。歌詞にも“あなたのまわりに誰もいないなら 私の名前を言ってみな!”とあり、「黙って浮気を見過ごす女じゃない」という強い意思が込められています。

また、同年発表されたのが「Independent Women Part I」。この曲は、自立した女性を讃える内容で、今ではその内容をモチーフにした楽曲がチャートでも多く見られるようになりましたが、「この曲がその潮流を作った1つのきっかけ」と言います。

MISIAとビヨンセ、2人の歴史を紐解き、たかみなは、“歌姫・ディーバの定義”について改めて考えさせられたようで、「歌の上手さだけじゃなく、何を伝えたいのかが明確で、芯の強さもある。そしてメッセージが揺るがないことが大事ですね」と話していました。

(TOKYO FM「高橋みなみの『これから、何する?』」2020年1月15日(水)放送より)