東京五輪が終わった後…「カイジ」みたいな日本はイヤだなぁ

引用元:夕刊フジ
東京五輪が終わった後…「カイジ」みたいな日本はイヤだなぁ

 舞台は、2020年の東京オリンピック後の日本。景気は後退し、世の中は殺伐とする。ほんの一部の金持ちと、大多数がはい上がるすべのない貧乏人という構図。

 10日公開された映画「カイジ ファイナルゲーム」(佐藤東弥監督)が描くのは、そんな社会で一発逆転を狙う群衆だ。

 主人公の伊藤カイジを演じるのは藤原竜也(37)。2009年の「カイジ 人生逆転ゲーム」、11年の「カイジ2 人生奪還ゲーム」に続くシリーズ最終回。

 完成披露試写会で藤原は9年ぶりのカイジ役に「スケールの大きいセットを組んでくれて、カイジの洋服を着ると、自然にその空気に入れた」と回想。

 カイジは派遣労働者で使用者側に労働力として骨の髄までしゃぶりつくされている。時折、金を持て余した大金持ちが主催する「若者救済イベント」が唯一の救い。金に飢えた若者は理性も人間性もない、欲望丸出しのゲームに挑むが…。

 運よくチャンスをつかんだカイジは、かつて自分をしゃぶった派遣会社の社長、黒崎義裕と対決する。演じるのは俳優の吉田鋼太郎(60)。

 舞台では共演経験のある2人だが映画では初共演。生の舞台のような丁々発止のやり取りが緊張感を持たせる。普段はあまり使わない言葉がせりふに含まれており、藤原は「スピードとテンションを持って的確に伝えることを、頭の片隅に置いてやった」という。

 カイジが対峙する人物に高倉浩介なる人物がいる。貧乏人が社会の足を引っ張っているとし、弱者排除を目指す首相首席補佐官。今の日本には見当たらないが、時代がひどくなれば、こんな悪玉が現れてもおかしくないと思える。俳優の福士蒼汰(26)が演じる。

 福士は「お芝居が楽しかった。藤原さんの熱量を感じましたし、僕も炎で返していきたいと思い、いろんな色の炎を見せながら闘いました」。

 貧者の死は軽く、生と死がゲーム的に描かれる世界は現実的には遠いが身近に感じられるのは、俳優陣の息詰まる対決姿勢があるからこそ。ギャンブル好き、一か八か好きにはたまらない刺激に満ちあふれており、奥に潜むのは人間の抱える清濁。それがスクリーンに見え隠れする。

 東京五輪後…。その先に映画のような格差社会が待ち受けてないことを願いながら、観客は重い足取りで映画館を後にする。