2月21日に公開された映画『Red』。本作は、島本理生の官能小説を映像化したもので、夏帆が、かつての恋人と不倫に溺れる妻・塔子を演じた。14歳で芸能界入りした夏帆にとって「本格的な恋愛映画は初めて」だという。注目されるのは性描写や恋愛模様だが、取材陣の質問に、夏帆は「そこが一番の見所ではないので」ときっぱり言い放つ。123分に描かれるのは、妻や母親としての正解ばかりが求められる現実で、いつのまにか押し殺してきた女の本性だ。【BuzzFeed Japan / 嘉島唯】
映画『Red』不倫に溺れる役を夏帆はどうやって演じたのか(動画) 夏帆
このままもう女性としては生きられないのだろうか…「塔子を演じられるのか不安があった」と夏帆は話す。すると記者たちは「不倫に溺れるからですか?」「濡れ場があるから?」と矢継ぎ早に質問した。
いえ。
静かな取材現場で、時折考え込みながら丁寧に話し始めた。
「……不倫は道徳的に許されることではないですし、賛否はあると思います。でも、演じる上では懸念することではないかなと。お芝居なので」
では、何が?
「女性としての葛藤」だ。 塔子の夫「真くん」は間宮祥太朗が演じる。遊びで歩くことはなく、子煩悩。周囲からは理想的な夫と言われる。 「塔子は結婚して家庭があって子供がいて。私とは違う環境で生きている。『良い妻でいなきゃ、良い母親でいなきゃ』という抑圧があるんです」
勝ち組。
美形で高給取りの夫と結婚し、夫の実家である邸宅で親夫婦と共に娘を育てる塔子は周りからそう見られている。しかし、彼女はもとから専業主婦志望だったわけではなく、保育園が見つからず仕方なく「寿退社」という形で仕事を手放していた。夫が「結婚しても働き続けて良い」と言ったから結婚したのに、だ。 塔子の元恋人・鞍田。出会ったのは10年前。鞍田の設計事務所で塔子は学生アルバイトとして勤務していた。 家の中で完結してしまう世界。ずっと家にいて家事と育児で塗り潰される生活。働く女性たちは体力的にハードではあるものの、自らの足で立つ広い社会を持っている。
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今の時代に生まれなかったら、私はもっと幸せだったのかもしれない。仕事のやりがいなんて知らなかったら。母親として妻として何重にもなった役割を負っても、埋まらないものがあるのだ。色んなことに遠慮してきた自分が初めて精神的にも経済的にも自立できて、居場所を得た。働くことは私にとって、そういう意味と価値を持つことだった。──島本理生『Red』中央公論新社
—————————-夏帆は塔子をこう分析する。
「塔子は『このままもう女性としては生きられないのだろうか…』という葛藤もあった。毎日狭い世界で生活をしていく中、一人の女性として、一人の人間として自分の人生を考えた時に『これで良いのだろうか…』と悩んでいたと思うんですよね」
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「映画は正しいことだけが描かれなくてもいい」夏帆が不倫に溺れる女性を演じた理由
引用元:BuzzFeed Japan