IGN JAPANが考える2019年のベストレビュー トップ10

引用元:IGN JAPAN
IGN JAPANが考える2019年のベストレビュー トップ10

2019年もたくさんのゲームが発売されたが、我々がレビューできた作品は全部で100作ほどある(翻訳も含める)。そのすべてにIGN JAPANとしての自信はあるが、ここでは中でも特に素晴らしかったレビューを編集部スタッフとフリーライターで投票し、合計10個ピックアップした。
ゲームレビューという記事は我々IGNとしては花形コンテンツであるが、必ずしもアクセス数が多いわけでも、簡単で楽しい仕事でもない。どちらかといえば、時間を非常にかけたわりに、その報酬が少なくなりがちなコンテンツだ。
すべてのゲーマーが納得させる内容のレビューは一般的な観点からしては不可能だし、レビューに対して批判的なコメントをいただくことは少なくない。だがそういった反応を得られるのも、レビューを行うことによるものであり、我々としてはゲームを評価するという文化や慣習自体を伝えていきたいと考えている。そのためには毎年、こうして振り返ることも必要であり、ゲームレビューを通じて、その年のゲームの全体像を展望することも可能となる。なお、IGNとIGN JAPANの評価のわかれたレビューについてのまとめはこちらで掲載している。
10本のレビューの小見出しはすべてリンクとなっているため、ぜひとも一読していただきたい。今年も何度も読み返されるレビューを掲載できるように努力していきたい。
LEFT ALIVE by 千葉芳樹

「2019年末年始」画像・動画ギャラリー

一般論からして、出来の悪いゲームを評することは難しい。技術的に難しいという以上に、モチベーションとしても困難なのだ。さらに本作においては、その難易度も苛烈であり、多くの人々がクリアを投げ出している。その困難に打ち勝った苦労はレビューの最初の一文「終戦。クリアしたときにそう感じた」という言葉から滲み出ている。
もちろん、単なる苦労だけでレビューが評価されるわけではない。千葉は自らの感慨を述べたあと、淡々とステルスゲーム、クラフティング、グラフィクスという観点で本作をレビューし、評価を行っている。単なる失敗作を失敗としてではなく、意味のあるものとして語ることを試みた労作だ。――今井晋
DEATH STRANDING by 福山幸司

アドベンチャーゲーム博士の福山は専門的な知識が豊富だが、ドヤ顔で読者に押し付ける代わりに、深い考察を可能にする道具として謙虚に役立たせている。例えば、作中で使われる専門用語について、先駆的に用語集を採用した小島監督の過去作『ポリスノーツ』と比較し、『DEATH STRANDING』になぜそれがないのかといった分析が他のレビューと差を付けているように思う。また、荷物運びについては「ゲームにおける『移動』を完全に再定義している」と断言している。革新的な要素を恐れずに絶賛し、その理由も詳しく分析できている。――クラベ・エスラ
シェンムーIII – レビュー by クラベ・エスラ

愛のある対象をレビューすることは、基本的には難しい。それにレビュアーが何らかの先入観があることも疑われやすい。その点で言えば、日本で一番シェンムー好きと言って良いクラベのレビューがすべての読者に完全に適任であるとは思えない。しかしながら、熟成されたファンの言葉はその業界の新参者よりも確実に聞くに値するものだと考え、編集部としてはクラベに本作のレビューを割り振った(本人が一番、本作のレビューに乗り気ではなかったのではあるが……)。
結果としてはさすがシェンムーファンとも言うべき、緻密な描写に加え、ファンとして納得いかないストーリー面にも切り込む丁寧なレビューとなった。すべてのゲーマーがこのレビューに賛同するとは思わないが、18年待ったファンがこの文章を書くという凄みは伝わるだろうし、その前提を持てば、この作品の価値は十分に理解できるだろう。――今井晋
Butterfly Soup – レビュー by 山田集佳

『Butterfly Soup』は一歩間違えれば「ただのビジュアルノベル」という評価になってしまうが、その独自性を見抜き、わかりやすく言葉にしたレビュー 。 自分の過去の経験を重ねたり、わかりやすい例を用いたりすることによって、その魅力は読者にとても明白に伝わる 。 冒頭の「私はいつもゲームを探している」から最後の下りまで読むと、本レビューはひとつの私小説としても成り立っているのだとわかり、その物語の中には『Butterfly Soup』のエッセンスが詰まっていた 。