アメコミ映画ブーム、配信系、応援上映など…2010年代は映画にとって革新的だった!

引用元:Movie Walker
アメコミ映画ブーム、配信系、応援上映など…2010年代は映画にとって革新的だった!

いよいよスタートした2020年。ここで、2019年までこの10年代に起きた映画界の変革をチェックしておきたい。いまとなっては当たり前になった映画のあれこれは、振り返ってみると10年代に定着したものばかりだった!

【写真を見る】MCUブームなど、2010年代を振り返る!(『アベンジャーズ/エンドゲーム』)

■ 歴代最高興収、金獅子賞受賞!アメコミ映画が大ブームに!

まず頭に浮かぶ2010年代の大きなトピックと言えばアメコミ映画の隆盛だ。これまでもスパイダーマンやバットマンなどのヒーロー映画がヒットしていたが、複数の作品が一つの世界観を共有するユニバース作品が次々と作られ、しかもここまでの大成功を収めてしまうなんてことは、10年前は誰が予想できただろうか。

2008年の『アイアンマン』から始まったマーベル・シネマティック・ユニバース(MCU)は、『アベンジャーズ』(12)で一気に知名度を上げ、これまで23作品が作られるドル箱シリーズへと大変貌。今年は『アベンジャーズ』シリーズの完結作『アベンジャーズ/エンドゲーム』(19)が公開されると、27億9780万ドルというとてつもない興収成績を記録。『アバター』(09)が持っていた世界記録を塗り替え、MCUの集大成にふさわしい世界興収歴代1位の作品となった。

また、『マン・オブ・スティール』(13)から始まりこちらも一つの世界観を共有するDCエクステンデッド・ユニバース(DCEU)を作り出したDCも忘れてはならない。ユニバースというという点ではマーベルの後塵を拝している感があるが、ユニバースから外れる『ジョーカー』(19)は、今年のヴェネチア国際映画祭で最優秀作品賞にあたる金獅子賞を受賞するアメコミ映画史上初の快挙を達成。娯楽性はもちろん、その枠にとどまらないアメコミ映画の新たな可能性を示した。

2020年も、マーベルは『ブラック・ウィドウ』が5月1日(金)に日米同時公開となっており、『エターナルズ(原題)』(11月6日全米公開)も控えているなど新たな局面に突入。また、ストリーミングサービスDisney+で配信される「ファルコン&ウィンター・ソルジャー(原題)」といったドラマもMCUに入り込み、さらなる拡がりを見せていく。一方のDCも『ハーレイ・クインの華麗なる覚醒 Birds of Prey』(3月20日公開)や『ワンダーウーマン 1984』(6月公開)など注目作がめじろ押し。さらに、ソニーによる『モービウス(原題)』、『ヴェノム』続編も全米で公開予定であり、アメコミ映画の勢いはとどまることはなさそうだ。

■ 上映テクノロジーが劇的にパワーアップ!

また、この10年で大きな進化を遂げたのが上映スタイルの多様化だろう。『アバター』のヒットにより10年代初頭の3Dブームが巻き起こったが、いまとなっては座席の振動や、風や水、香りといった特殊効果が楽しめる4D(体感)が当たり前という時代に。2013年の『アイアンマン3』で日本で初めて4DXが上映されると、2015年には4DXより多い演出が楽しめるMX4Dも上陸。さらに今年は、4DXに3面マルチプロジェクション上映システムScreenX (2017年に上陸)を組み合わせた4DX with ScreenXが日本に導入されるなど、凄まじい勢いで進化を見せている。

さらに、2009年に日本に登場した“臨場感あふれる映像体験”が味わえる映写システムのIMAXデジタルシアターもすっかり定着し、10年代には4Kレーザー投影システムと12chサウンドシステムを用いたIMAXレーザーや、高さ約18m×横幅約26mの巨大スクリーンに4Kツインレーザープロジェクターの映像が映し出されるIMAXレーザー/GTテクノロジーも人気となった。

これらのほかにも、2019年10月から丸の内ピカデリーが、都内初の高画質・高音質を追求したドルビーシアター専用劇場として再オープンするなど、新設備のシアターが続々と登場。観るだけでなく、映画を体感するものとして、映画館にアトラクション的要素やリアルな臨場感を与えてくれるこれらの技術。20年代はどんなテクノロジーが誕生するのか?期待がふくらむばかりだ。

■ 応援上映、爆音上映!鑑賞スタイルも多様に

10年代は映画の鑑賞スタイルにも大きな変化があり、その最たるものの一つが応援上映だ。鑑賞中に観客が歓声を上げたり、ツッコミを入れたりするこのスタイル。もともと『ロッキー・ホラー・ショー』(75)が元祖と言われているが、日本では10年代に大ブレイク。そのきっかけとなったのが、2016年のアニメ映画『劇場版 KING OF PRISM by PrettyRhythm』だろう。コスプレOK、声援OK、サイリウムOKというこの上映は、テレビのニュース番組でも取り上げられたほどの盛り上がりを見せた。

このほかにも、『バーフバリ』シリーズのマサラ上映や、『アナと雪の女王2』(公開中)のシンガロングOKのプレミアム応援上映など、様々なジャンルの作品で応援上映が行われるようになり、一つの形として定着した。

また、爆音ブームも10年代の印象的な鑑賞スタイルの一つ。いまはなき吉祥寺バウスシアターで2004年に産声をあげた爆音上映はライヴ用の音響システムを使って映画を鑑賞するというもの。boid企画制作のもと2008年からは「爆音映画祭」という形に進化。以降、全国津々浦々で映画祭が行われている。

そんな爆音上映を常態化して大きな注目を集めたのが立川シネマシティだ。6000万円のスピーカーを導入すると、『マッドマックス 怒りのデス・ロード』(15)や『ガールズ&パンツァー 劇場版』(15)などの作品で話題となり、爆音の聖地として全国から映画ファンが足を運ぶまでになった。

■ Netflixがアカデミー賞受賞作品を制作!

劇場の設備や鑑賞スタイルがパワーアップする一方で、お家で楽しめるコンテンツにも変化が起きた。それまでソフトのレンタルが一般的であったところに入り込んできたのがストリーミングという形。そのブームを作り出したのがNetflixだ。

もともと既存作品のストリーミングで注目を集めたが、オリジナル作品の製作にも着手すると、次々と良作を連発。2018年は『ROMA/ローマ』が、第91回アカデミー賞で外国語映画賞・監督賞・撮影賞の3部門を受賞したことも記憶に新しい。19年は『アイリッシュマン』、『マリッジ・ストーリー』、『2人のローマ教皇』といった作品が第77回ゴールデン・グローブ賞で作品賞を含む複数の賞にノミネートされるなど存在感が増しており、ついにNetflix史上初となるアカデミー賞作品賞を受賞するのかにも注目が集まっている。

また、配信系ではAmazon Prime VideoやHuluなども、数々のオリジナル作品を作り出しており、まさにVOD戦国時代。観たいコンテンツがありすぎるという、うれしい問題に頭を悩ませている人も多いことだろう。

振り返ってみると様々な革新的な変化が満載だった2010年代。20年代はどうなるのか、いまから楽しみでならない。(Movie Walker・文/トライワークス )