『夜は短し歩けよ乙女』地上波放送 湯浅監督作品の「食わず嫌い」が克服できる?

引用元:マグミクス
『夜は短し歩けよ乙女』地上波放送 湯浅監督作品の「食わず嫌い」が克服できる?

「お正月は自宅でまったりと過ごしたい。でもって、最高に面白いアニメが観たい」

 そんな人におススメなのが、2020年1月3日(金)23:30からNHK総合でオンエアされる長編アニメ『夜は短し歩けよ乙女』(2017年)です。声の出演は星野源さん、花澤香菜さん、神谷浩史さん、秋山竜次さん(ロバート)と豪華。観光地ではない夜の京都を舞台に、夢のような不思議な世界が繰り広げられ、おとそ気分で楽しむのにぴったりのファンタジー作品です。

【画像】新作『映像研には手を出すな!』ほか、名作ぞろいの湯浅監督作品(5枚)

 人気作家・森見登美彦氏のベストセラー小説を劇場用アニメーションに仕立てたのは、湯浅政明監督です。『マインド・ゲーム』(2004年)で監督デビュー以降、松本大洋氏原作コミックをTVシリーズ化した『ピンポン THE ANIMATION』(フジテレビ系)や永井豪氏の伝説的コミックを完全映像化した『DEVILMAN crybaby』(Netflix)などの先鋭的な作品を放ってきました。

 2020年1月2日(木)22:35からEテレでオンエアされるオリジナルアニメ『夜明け告げるルーのうた』(2017年)は、アヌシー国際アニメーション映画祭で長編部門最高賞を受賞しています。これは『紅の豚』(1993年)の宮崎駿監督、『平成狸合戦ぽんぽこ』(1994年)の高畑勲監督に続く快挙でした。『夜は短し歩けよ乙女』は、日本人監督として初となるオタワ国際アニメーションフェスティバル長編部門グランプリを受賞しています。世界的に高く評価されている天才アニメーターなのです。 『夜は短し歩けよ乙女』地上波放送 湯浅監督作品の「食わず嫌い」が克服できる? 映画『夜明け告げるルーのうた』 (C)2017 ルー製作委員会

湯浅政明監督の「食わず嫌い」はこれで克服

 湯浅監督のアニメーションならではの自由奔放な動きは、目を見張るものがあります。『夜明け告げるルーのうた』で人魚のルーが音楽に合わせて踊るシーン、オリジナル劇場映画『きみと、波にのれたら』(2019年)のクライマックスのサーフィンシーンには圧倒されます。

 その反面、天才肌すぎるせいか、一般的な知名度はまだ高いとは言えません。萌え系アニメとは異なる、クセのあるキャラクターデザインも好き嫌いが分かれるところでしょう。

 その点、『夜は短し歩けよ乙女』は、湯浅作品が食わず嫌いだった人でも、あまり抵抗なく受け入れることができる作品となっています。キャラクター原案は、原作小説の装丁を飾った人気イラストレーター・中村佑介氏が担当。ちょっとノスタルジックな中村佑介氏の画風と、京都の歴史ある街の雰囲気がうまくマッチしています。ヒロインである「黒髪の乙女」が赤いダルマのコスプレ姿で参加するミュージカルシーンは、とてもラブリーなものになっています。

 主人公は京都の大学に通う、男子学生の「先輩」(CV:星野源)です。先輩は同じクラブに所属する後輩「黒髪の乙女」(CV:花澤香菜)に想いを寄せ、近づくチャンスを狙っています。ところが百鬼夜行のごとく現われる奇人変人たちによって、ことごとく邪魔をされてしまいます。

 謎の老人・李白、古本市の神様、パンツ総番長など、個性的なキャラクターぞろいですが、描かれるエピソードは「片想いあるある」ばかりなので、共感できるシーンは多いと思います。最後には細かい小ネタがすべて物語の伏線として回収され、ほっこりした気分にさせてくれます。

 本作が気に入った人は、湯浅監督が作家の森見登美彦氏と初タッグを組んだTVシリーズ『四畳半神話大系』(フジテレビ系)も、ぜひチェックしてみてください。『夜は短し歩けよ乙女』と同じく京都を舞台にしており、パラレルワールド的な世界観を楽しむことができます。湯浅監督の奔放なイマジネーションには驚くばかりです。