【ガンプラ40周年】“ガンダムの生みの親”が語る、『ガンプラ』で“文化論”を意識すべき理由

引用元:オリコン
【ガンプラ40周年】“ガンダムの生みの親”が語る、『ガンプラ』で“文化論”を意識すべき理由

 日本アニメの金字塔『機動戦士ガンダム』が昨年40周年を迎えた。そして2020年となった今年、ガンダム人気の屋台骨を支え続けてきた『ガンダムプラモデル(以下、ガンプラ)』も40周年を迎えた。そのガンプラ40年の歴史においてエポックメイキングとなったのは1980年代前半のガンプラブームだ。では、当時の狂騒的な盛り上がりを、“ガンダムの生みの親”である富野由悠季氏はどう見ていたのか。ガンダムとガンプラが共に歩んだ40年を富野氏に聞いた。

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■MSVがアニメ『Zガンダム』に逆輸入、ガンダム正史に及ぼしたガンプラの影響力

 『機動戦士ガンダム』40年の歴史においてガンプラの果たした影響を富野氏に聞くと、「ガンプラの影響力は“決定的”です。もはや、プラモデルというジャンルさえも『ガンプラ』という名前に切り替えさせてしまったくらい、強力な“事業”になったということです」と気炎を吐いた。

 とはいえ、富野氏はバンダイのプラモデルについて当初、「バンダイがガンダムのプラモデルに参入してきた時、僕は徹底的にクレームをつけました」と述懐した。それは「本気になってプラモデルを作るなら、タミヤに負けてもらっては困る」という想いからだ。ミリタリーものを再現するときの技術論は、いわゆる“巨大ロボットもの”の発想と根本的に違うと解説。続けて、「バンダイはタミヤが表現しているようなミリタリーもののディテールが全く出来ていなかったんです。ミリタリーもののリアリズムに負けないような作り方をしてほしいとお願いした」という。

 では、当時バンダイがタミヤに負けていた部分というのは具体的にどこなのだろうか。

「根本的な問題として金型の問題も承知していました。また、ガンプラがヒットし、模型業界で成功を収めたバンダイがダラしなくなってきているとも感じていました。こんなことを続けていたら飽きられるぞと。一般論的に言わせてもらいますが、機械的構造の再現をどう縮小して再現するのか、という造形を目指してくれなければ困ると伝えました」

 ガンプラにおけるミリタリー要素といえば、MSV(モビルスーツバリエーション)の存在を頭に浮かべるガンダムファンは多いだろう。MSVがガンダムの世界観を広げてリアリティを作品に与えたことで、ガンプラを子ども向けだと見ていた大人のモデラー層を取り込むキッカケとなった。また、MSVの作品がアニメ『Zガンダム』に逆輸入されるなど、ガンプラがガンダム史において多大な影響を持つターニングポイントともなった。

 MSVの果たした役割について富野氏は「まったくその通りです。ただ、当時から20年、30年と経ったからそう見えるだけで、Zガンダムの頃までは、こんなものじゃダメだ、ミリタリーものの精度に負けている」と、バンダイに対して明確に指摘したという。バンダイの担当者に「それはギミックが違うので…」と言われれば「うるせーよ!」と言い返していたとも…。「いま、当時のスタッフは全員偉くなっているから、みんな忘れているだろうけど(笑)」と、富野氏はチャーミングな笑顔を見せた。