【王手報知】清水市代女流六段が選ぶ“将棋界10大ニュース”とは

引用元:スポーツ報知
【王手報知】清水市代女流六段が選ぶ“将棋界10大ニュース”とは

 平成から令和への改元があった2019年、将棋界も激動の1年となった。日本将棋連盟常務理事の清水市代女流六段(50)は「大切なものは変わらない、ということに気が付けた令和元年でした」と年の瀬の思いを語る。女流棋界のレジェンドが挙げた「将棋界10大ニュース」とは?

 「ごめんなさい。少し手前みそかな…と思いつつも、個人的な思い入れも強いので『棋才 平成の歩』を挙げさせてください」

 平成を彩ったレジェンドが1位に挙げたのは、平成が終わろうとしていた4月末に開催された回顧イベント「棋才 平成の歩」だ。清水は連盟理事として自ら発案、運営に尽力した。「最初はなんとな~く提案したんですけど、どんどん構想が膨らんで、800人ものファンの皆さんとご一緒できて、令和への大きな出発点になりました」

 谷川浩司九段、佐藤康光九段、羽生善治九段、森内俊之九段、渡辺明3冠、里見香奈女流名人、藤井聡太七段、そして自身が勢ぞろいする超豪華な祝宴に。途中、令和時代に起きる出来事を予想するコーナーで清水は「何かやってくれると思うので」との理由で「里見香奈」という4文字を書いた。

 予言は早々に的中。8月、里見は史上初の女流6冠を成し遂げた(2位)。偉業達成の舞台となったのは、こちらも清水が設立に携わった新女流棋戦「清麗戦」だった(3位)。「こだわったのは、将棋界初の『2敗失格システム』でした。1敗してもチャンスが残りますし、女流棋士の対局数が増えるので。あと『清麗』というタイトル名も。女性らしい言葉を選びたい、という思いがずっとありました」

 女流棋界を代表する者としての思いは順位に表れる。「やっぱり…女流の話題を上位にさせてくださいね」。女流全7冠制覇も視野に入った里見だったが、西山朋佳女王が里見から女流王座、女流王将を連続奪取(4位)。2強時代に突入した。「多くのタイトルを持つと、どうしても目標を見つけるのが難しくなってしまいますが、西山さんが現れたことは、里見さんをもっともっと高い場所まで導いていくことになると思います」。こだわりの5位は若手女流の台頭。加藤結李愛女流初段(16)が倉敷藤花戦で挑戦者決定戦に進出するなど、変化の兆しは確実にある。

 6~10位には男性棋戦の話題が入ったが、朝日杯連覇など今年も大活躍した藤井聡太七段(17)のニュースはあえて入れなかった。「もちろん偉業ですよ。でも、まだまだ驚いちゃいけないなと思ってるんです。もっとすごいことを絶対に実現させる将棋界の宝なので、彼に失礼かなと思ってしまいました」

 昭和62(1987)年、清水は18歳で初タイトルの女流名人を獲得。以降、平成30年間で史上1位のタイトル43期を積み上げた。そして令和という新時代にも現役として、また理事として立ち向かっている。「時代は安定ではなく変化を求めています。でもね、変わらないものも大切にしたいなって思うんです。改元のあった2019年は将棋界の盤上も盤外も変化した年だったと思いますが、でも本当に大切なものというものは変わりません。…ということに気が付くことの出来た令和元年だったと思います」

 清水にとっての「変わらない大切なもの」、それは将棋と将棋界への愛である。(北野 新太)

 ◆清水 市代(しみず・いちよ)1969年1月9日、東京都東村山市生まれ。50歳。故・高柳敏夫名誉九段門下。8歳で将棋を始め、85年に女流棋士に。96年に史上初の女流4冠独占。通算獲得タイトル43期は歴代1位。17年に女性として初めて日本将棋連盟常務理事就任。昨年の女流王座戦で挑戦者になるなど今もトップ女流棋士として活躍を続ける。生粋の居飛車党。趣味は茶道。 報知新聞社