「究極の大トリ」サブちゃん、AIひばり 紅白カギは演出

引用元:中日スポーツ
「究極の大トリ」サブちゃん、AIひばり 紅白カギは演出

令和初の「NHK紅白歌合戦」が31日夜、放送される。1951(昭和26)年のラジオ放送に始まり、ことしは70回目の節目を迎える。「紅白歌合戦と日本人」の著書がある太田省一さんは、1年のヒット曲を確認する場から、今の流行を知る番組へと緩やかやかな役割の変遷を感じとっている。近年の注目は企画性、演出力という。

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 「ライフスタイルがばらばらになり、視聴者の共通項が少なくなった。大みそかに1年を思い出す番組だったのが、ライブやインターネット発など、表に出にくい今のはやりを聴かせる見本市となっている」のが今の紅白だ。

 主戦場がネットの米津玄師、動画サイトから広がったDA PUMPの「U・S・A」、あいみょん、Official髭男dismらはライブから広がった。指標もCD売り上げから、ライブ動員数、再生回数へと移行した。

 紅白の企画、演出力は、1990年代から徐々に強まり、2010年代には際立つようになった。近年の高視聴率の44.5%を出した2013年は、紅白引退を宣言した北島三郎が「究極の大トリ」を務めた。歌合戦の形が尊重された1980、90年代から、紅と白の対抗が崩れつつある今、応援やミニドラマ、衣装など、音楽以外の面が強調されている。「みなが知るヒット曲が少なくなるのと反比例して、演出が斬新になっていった」と太田氏は分析する。

 演出のひとつに中継がある。長渕剛は1990年、壁が崩壊したベルリンから出演。「スタッフはタコ」と放言し、物議を醸した。2018年、米津玄師は古里から初出場した。出演するか否かのサプライスも定番となっている。 「究極の大トリ」サブちゃん、AIひばり 紅白カギは演出 人工知能技術で映像と歌声をよみがえらせた「AI美空ひばり」=30日 、東京・NHKホールで  メドレーも増えた。1人1曲が原則だったが、1979年に特別出演した美空ひばりと藤山一郎が各3曲をメドレーで歌い、1992年には解散前のチェッカーズがメドレーを披露した。視聴者が求めるヒット曲、懐かしの曲と、歌手側が売り出したい新曲を組み合わせられる実利面のほか、「紅白バージョンと銘打つことでスペシャル感を出している」と太田氏。石川さゆりは「天城越え」「津軽海峡・冬景色」を年交代で歌い、往時の形を受け継いでいる。

 今年ならではが期待される企画がめじろ押しだ。歌手ビートたけしと竹内まりやの「初出場」、YOSHIKIとロックバンド「KISS」の共演。「AI美空ひばり」は、先端技術を駆使した企画だが、美空を「リアルタイムに見てきた視聴者にはアレルギー反応があるのでは」。

 紅白には「出場辞退組」も一定数いるとみられ、中継や特別枠など企画を打ち出さないと出演してもらえないとNHKは知恵を絞る。太田氏は「トップといっていいショーを動かすのはNHKの技術と知恵が土台にある」。

 東京五輪前の1963年は、爆破予告の騒ぎがあった。東京五輪・パラリンピック直前の今年の紅白について太田氏は「五輪色をどう演出するか」も気になるという。 「究極の大トリ」サブちゃん、AIひばり 紅白カギは演出 太田省一氏   ▽太田省一(おおた・しょういち) 1960年、富山県生まれ。社会学者、文筆家。専門はテレビ文化論。主な著書に「紅白歌合戦と日本人」「攻めてるテレ東、愛されるテレ東 『番外地』テレビ局の生存戦略」。