小室哲哉、最大のヒット作globeの1stアルバム『globe』の歴史的意義

引用元:OKMusic
小室哲哉、最大のヒット作globeの1stアルバム『globe』の歴史的意義

OKMusicで好評連載中の『これだけはおさえたい邦楽名盤列伝!』のアーカイブス。今回は小室哲哉、最大のヒット作であるglobeの1stアルバム『globe』を紹介する。90年代に一世を風靡した“小室ファミリー”の中でも、小室本人の参加もあってか、他のアーティストとは若干雰囲気の異なる陰影が感じられるユニットであるが、1stアルバムにして最大のヒット作となった『globe』から、改めてこのグループの本質を見極めてみたい。
※本稿は2015年に掲載

近代芸能史に名を残す音楽家

「何を今更…」と言われるかもしれないが、あえて強調しておこう。小室哲哉は偉大な音楽家である。1970年代半ばより裏方として音楽シーンで活動を開始。84年、自らのバンドであるTM NETWORKでデビュー以後、プロデューサー、コンポーザーとしても頭角を現し、数多くのミリオンセラーを世に送り出してきた。これが俗に言う“小室ファミリー”で、有名どころは安室奈美恵、華原朋美、観月ありさ、篠原涼子、trf、hitomi、内田有紀、H Jungle with t、dos等だが、一説には小室氏が手掛けたアーティストは100組を超えると言われている。

以下はウィキペディアからの抜粋である。「1996年4月15日にはオリコンシングルチャートにおいてプロデュース曲がトップ5を独占した。1996年は安室奈美恵のアルバムも300万枚を超えるなど、この年だけでプロデュース曲の総売上枚数は1,500万枚以上を記録した。さらに1996年から2年連続で高額納税者番付において全国4位を記録、1997年の納税額は11億7000万円で推定所得は約23億円だった」。

売上枚数や納税額がすなわちその音楽性の優秀さではないであろうが、ここまでの実績があれば数字とその才能とが無縁だとは言えないであろう。今も驚異に感じるのはその量産体制だ。スペースの都合で流石にその全てを挙げられないが、95年から5年間くらいまでの仕事量は特に尋常ではない。この間、毎月3~6曲をプロデュースしているのだ。この辺りのワーカホリック的動きを粗製乱造と揶揄する人がいるのも事実だが、仮に(あくまでも“仮に”だが)質の低い作品を乱発していたとしても、それが5年間も続くはずもなく、その流行作家としての手腕は群を抜いていたことは間違いない。昭和の大作曲家、大作詞家と比べてもその実績は決して劣るものではないし、それどころか、歴代作曲家売上ランキングでは筒美京平氏に次いで2位と、大袈裟ではなく、近代の日本芸能史に名を残す音楽家と言ってもいいのである。