「lainと言うコンテンツが生き延び続けていく。それを見守りたい」 serial experiments lainファンイベント「クラブサイベリア layer:03」レポート

引用元:ねとらぼ

“lainを好きになりましょう。lainを好きになりましょう。lainを好きになりましょう。”

【画像】玲音役の声優・清水香里氏などが登壇

 1998年に放送されるや否や、瞬く間にカルトアニメとしての地位を確立した「serial experiments lain」。その第12話、遍在するlainに共振したアナウンサーが幾度も画面の外に呼びかける印象的なセリフをサンプリングした「“S”peEd~玲音を好きになりましょう」が、渋谷の地下に鳴り響く。ドラッギーな幾何学模様と爆音に支配されたこの様相は、昨年(2018年)に続き開催されたserial experiments lainファンイベント、「クラブサイベリア layer:03」の一部。

 作中DJである“JJ”を演じたWASEI CHIKADA氏が「これは『lain』の続きの物語だ」との言葉と共に送り出した新盤の先行販売も行われたフロアでは、前回の倍の数に匹敵する「lain」ファンたちが歓喜の中拳を突き上げ、lainを、レインを、れいんを――岩倉玲音の名を叫んでいた。

ファンとの共振で生まれた一大イベント

 東京では2度目の開催となるこのイベントは前回同様、シオドア氏をはじめとするファン有志たちの手によって実現されたもの。もともとは「lain」20周年の思いつきとしてTwitter上での同時視聴を呼びかけたところ、本作のシリーズ構成・脚本を手掛けた小中千昭氏がこれに反応。当時の思い出を振り返るブログ「Welcome Back to Wired」を開設し、これにより同時視聴の輪が拡大していった。

 「実際のクラブでイベントを行うことでlainファンの橋渡しができたら」と考えた小中氏の声かけに応じる形で、プロデューサーの上田耕行氏、岩倉玲音役の声優・清水香里氏、キャラクターデザイン安倍吉俊氏が登壇、DJとして“JJ WASEI CHIKADA”氏がそのDJプレイを行うという、ファン主催としては異例ともいえる一大イベントとなった。

 昨年同様、今年も2人のDJ・VJによるプレイを挟み、続いて関係者によるトークショーが行われた。「いつかまた周年の際にやれたら」と思っていたという小中氏に加え、清水氏も続投。安倍氏も昨年同様、トークの合間にライブペインティングパフォーマンスにて引き続き登壇し、今年はさらにスペシャルゲストがもう1人。既に芸能界を引退していたタロウ役の滝本啓人氏が登壇すると、観客からはどよめきの声が上がる。それもそのはず、氏はチケットのもぎりスタッフとして会場に紛れ込んでいたからだ。収録当時は小学生、子役として活躍していた滝本氏も今や立派な大人に。清水氏が「大きくなったねえ……」と感慨深そうに漏らすと、会場は笑いに包まれた。

「すごく前の作品なのに(参加者に)若い方が多くて、どうしたと!(笑)放送から21年経って広がってるってすごいな」(清水氏)

「見返してやっぱ思うことは『わけわかんねえ』(笑)当時自分が10歳でして、母に録画してもらって見ていましたが、母親も他の親達に教えるか困っていたと思う」(滝本氏)

 など、率直な言葉が飛び交うセッション。当時の収録秘話(※1)や滝本氏のこれまで(※2)について触れながら、会場の客層に自身の年齢について挙手を募ると、実に半数以上が20代。また初参加者がほとんどという結果になり、「lainでどれだけ人を集められるのか。あえて今回はプロモーションを(自分からは)行わなかった」という小中氏をはじめ、登壇者はみな驚いていた。

 小中氏からは「若い方には伝わらないかも」と前置きながら、lainの発想の起点となった映画についての話(※3)や、用意している新作(※4)についての情報など、1時間以上にわたる濃密な話を展開。そしてトークショーも終わりに近づき、満を辞して“JJ”が登壇。滝本氏を登壇させた立役者(※5)である彼が見事に最後をかっさらっていった。

 作中に登場する電子ドラッグ・アクセラを幻想的に再現した映像や、作中シーンのカットアップと共に流れる冒頭にあげた「“S”peEd」に続く曲では、JJが滝本氏と共にDJブースに立つ姿も。lain放送当時、滝本氏同様年端もいかなかった人々が1カ所に集い、クラブアレンジされた「Duvet」のサビやエンディグテーマ「遠い叫び」のフレーズ、「永遠のならず物達を……」と歌いあげる様は、胸に込み上げるものがあった。